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2021年11月25日16:13

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1500

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1500       

辻真先 「たかが殺人じゃないか」        

昨年出版されたミステリー小説の中で特に評判を
得たのが本書である。

著者は1932年生まれ。昨年は88歳だったわけだが、
そのお年で創作活動すること自体すごいのに加え、
作品が素晴らしいのに驚く。

時代は昭和24年、まだ戦後の傷跡が残っていた
頃だ。登場人物は名古屋の高校生たちと教師など。

男女共学がはじまったばかりのときで、生徒にも
先生にもとまどいがあった。男子2名女性3名の
推理小説研究会と映画研究会とは合同で学園祭の
出し物を創作すべく、顧問の女性先生とともに
県内の温泉へ1泊2日の旅行に行くことになった。

温泉旅館の近くの元観光地の廃園を利用する
ことになった。そこで、まず密室殺人に遭遇する。
殺されたのは町の有力者の評論家。そして、さらに
次は首と胴体・手足がバラバラの死体を発見する。
死体は地元の市会議員だ。

いったい誰が、どのような方法で、どのような
動機で犯行におよんだのか? 本格ミステリーの
王道をいく推理が始まる。これを担うのは5人の
高校生と顧問の先生だ。

この小説を面白くしているのは、なによりも
時代背景だ。終戦から数年、まだ日本人は新しい
世の中に慣れていない。ミンシュ、ミンシュと
叫ばれ民主主義の世の中になったことになって
いるものの、まだ戦争時代のままの気持ちだし、
特に大人は古い価値観を持っていた。

そして戦争直後とは言え、若い高校生たちが
集うわけだから男女の恋愛感情も芽生える。
彼らの心の動き、そして各自の家庭の背景が
絡んで、彼らの人間関係も揺らぐ。

とにかく実際に昭和を生きてきた著者なので、
話にリアリティがあふれる。ときどき現在の
視点で昭和を説明することもあり、若い読者にも
理解できるのではないか。

登場人物たちは映画が大好きで、あの時代の
古い邦画・洋画の話が随分と登場する。作家に
なる前は映画やテレビの仕事についていただけに
面目躍如といったところだが、ややくどいと
感じるかもしれない。

本格ミステリーとして、また終戦後の日本の
様子を知る小説として、楽しめる作品ではある。



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