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2021年11月12日08:45

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1498

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1498       

ディーパ・アーナパーラ 
「ブート・バザールの少年探偵」      

これは現代インドの物語。ハヤカワ・ミステリー
文庫の一冊なのでミステリーと思われそうだが、
ミステリーではない(と僕は思う)。

舞台はインド北部の町。この町のスラムに9歳の
少年が両親と姉とともに暮らしている。ある日
クラスメートが行方不明になる。しかし、学校も
警察も真面目に取り扱ってくれない。そこで少年は
友人2人とともに、自ら探偵と名乗り、捜査に
乗りだす。

いっこうに捜査が進まない中、別の子どもも
行方不明となる。そして、さらに行方不明の
子どもたちが増えていく。

インドは毎日180人の子どもが行方不明となる。
家出もあるだろうが、大半は誘拐で、人身売買の
犠牲となったり、殺されて臓器が販売されたり
ということもあるようだ。

そんな社会の暗黒部分がこの小説のテーマでは
あるが、あまり暗さは感じられない。というのも
少年とその仲間らの日常生活が生き生きと描かれて
いるからだ。貧しくとも、その中で彼らは明るく
日々をおくり、そして大人たちの生きざまを、
社会のカタチをストレートに観察している。
そのまなざしには濁りがない。そして、自らの
境遇であれば将来も親たち以上の生活を望むことは
難しそうだという自覚がありながらも夢を抱く。

そんな健気な少年たちに読者は次第に共感をおぼえ、
応援したくなってくるだろう。

インドの下町の景色や喧噪、匂いが手に取るように
伝わってくる作品だ。
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