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2021年11月06日12:42

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1496

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1496      

町田そのこ 「52ヘルツのクジラたち」       

2017年デビューで今年41歳の作家の作品。
この人の小説を読むのは初めてだ。

主人公は20代半ばの女性。彼女は都会を離れて
田舎の一軒家に住み始める。若い女性が田舎に
一人で住み、しかも無職なので、地域の人たちは
いろいろ疑う。実際、わけありなのだ。そんな
彼女がふとしたきっかけで少年に出会う。
少年は一言もしゃべらない。彼の体にはあざが
あり家族から虐待されていると思われる。

女性と少年を中心に、地域の人たちの人間模様が
描かれてゆく。その一方で、彼女がこの小さな
田舎町に行きつくまでの話が並行してすすめられて
ゆく。これから読む人たちのために詳細は
明かさないが、彼女は波乱万丈の半生を送ってきた。

少年の家族関係が女性の家族関係と似ていることも
あり、彼女は少年の生活をなんとか正常に戻したいと
考えるが、なかなかうまくいかない。しかし、
都会から遊びに来た友人や地域の若者らの協力を
得て、すこしずつ前に進む。

この作品のテーマは、厳しい家庭環境にあっても
心ある人たちの協力を得ながら自分自身を見つめ
なおす中で人は未来に向かって歩いて行けるという
ことなのだろう。また、ジェンダーの問題も入って
いる。

全体の印象としては、ストーリーをやや作りこみ
すぎではあるが、人間関係の薄い現代における
一つの指針を示しており、その点好感が持てる。

主人公が限られた人間関係の中で生きてきたため
人との接し方が不器用なのは理解できるのだが、
彼女を援助する人たちへの信頼の一方で、そうで
ない人たちへの警戒が薄い。その点リアル感が
やや不足していると思った。

次作を期待したい。

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