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2021年11月01日15:38

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Half-killed night

シャドーをきっているわけだが対象物は光
とても小さな光だ

蛍光灯から下がっている紐
末端に円筒形のプラスチック
ごくごく薄く緑がかった白
なんかの拍子に僕は
そいつを殴る
「シュッ」っと
大げさに呼気を漏らし
一瞬のシャドーボクシング
生活の節目節目に


部屋の明かりを消した
ちょうど目線の当たり
蓄光材の放つ辛うじた光
目に見えぬ単位で弱まっていく
氷が解けるような音を爆ぜて

しゅっ

脊髄反射を超越して
ジャブが飛んで行った
流動する闇
頬を掠める

しゅっ
しゅしゅっ
はっ
しゅ
しゅしゅっ

僕の意思を置き去りに拳が疾る
憎しみも敵愾もなく怒りにも届かぬエネルギー
血流に含まれるアデノリン三燐酸が主体となり
勝手に拳に命令している僕はそれを虚ろに眺め
意思の不在を嘆いた いや
せめて何らかの情熱であるべきだと感じた
ただの放熱であってはならない つまり
この小さな光は僕の中で何らかの象徴であったり概念であるべきで僕はそれを
ぶっ叩くことにより
「触れえぬ心中の何かもやもやとしたものに打撃を与えているのだ」と
そう思いたいのです

名もなき小さな光
心中に抱える宿痾の病巣
たった2cmのプラ材に仮託し僕は殴り続ける
点光が弧を描くその軌跡鈍く
音速を遥かに望む

しゅっげふっ

今日一身を捻った途端
ゲップが出た
セブンイレブンのお高いビーフシチューの香り
パッケージを伴って闇に浮かんだ
僕は笑顔で「サヨナラ」を告げる
誰にも見えない闇の中で

このまま殴り続ければ
中指の付け根が裂けるほど殴れば
僕の中の半分はきっと撲殺されることだろう
(それほどの割合で僕は僕自身と折り合いがついていない)

肺に導引した闇に微熱を与え
促音を混ぜ唇から放出する
半殺しの夜
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