熊井啓監督の生誕90年を記念し、池袋の新文芸座で「熊井啓映画祭」が開催されています。
その中に、1978年作品「お吟さま」が。
オリジナルは158分だったそうですがプリントの褪色が激しいため、今回は国立映画アーカイヴ所蔵の海外版(117分)が上映されました。
以前CSでオンエアされた時に観たバージョンですが、「これはスクリーンで観たい!」と思い立ち、コロナ禍がやや落ち着いた今ならば、と、約1年半ぶりに池袋に足を運んだのでした。
いやー、観て良かった。
千利休の義理の娘・吟の、高山右近への命がけの恋を軸に、時の権力者・太閤秀吉に抗い、それぞれの義を通そうとする人々を描いた、美しく激しい物語であります。
作品の根底に流れるのは、いつの世も変わる事のない平和を希求する心。そして、人を恋うるとは「全てのしがらみからの解放」と同義である、という精神。
手にした権力を思いのままに振るおうとする者には極めて邪魔なものを、本作の登場人物たちは死を賭して守ろうとするのです。
「負けて・・・、負けて死にゆくのではないぞ!」
秀吉の求愛を拒み、死を決意した吟に自らも命を捨てる覚悟をした千利休がかけたこの言葉が、観る者に深い感銘を与えます。
八王子攻めを秀吉に命じられた高山右近が、城を守る手勢に和睦を呼びかけるシーンも秀逸です。
「人は殺さぬ。共に祈ろう! 和を結ぼう!」
この言葉を、世界中の指導者たちに聞かせたいものです。
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