アテネ市内の商業地で、父親とともに高級紳士服の仕立て屋を長らく営んできた、寡黙でやや神経質な男ニコス。不況のあおりを食って店は銀行に差し押さえられ、父親は病の床に臥してしまう。起死回生をはかりたいニコスは意外なところから新たなパートナーにめぐりあい、屋台を引きながらの移動式店舗に活路を見出していく…。
最初のセリフまで5分少々、この静寂だけで仕立て屋という職業はいかに沈黙に包まれ、ニコスは人づきあいが得意でないタイプだとわかる。いやいやニコスだけでなく、この作品はセリフが総じてブツ切り感、饒舌に見えるキャラでさえもあまり多く語らない。唯一の例外は隣に住む移民の女の子、おしゃまなヴィクトリアくらいか。
かってこの業界にからんでいたこちらとしては、懐かしい思いとともにいろいろと見えすぎてしまい、中盤以降の展開にはツッコミを入れまくりたくなるも、ここはあくまで作り話と我慢の連続。屋台で高級紳士服地をセールスするニコスの一連の言葉なんて、あのころこちらが喋っていた言い回しそのまんま、思わず笑ってしまった。
なので今回ばかりは映画を観る側としては失格なのかも。それでもエーゲ海の自然とともに市場の雑踏やパーティーの賑わい、アテネの市井の人々の愛らしさは十分に魅力的。ただ中盤以降の話の広がりの割には、エンディングはちょっと尻すぼみだったか、高級スーツの仕立て屋が“大風呂敷”を広げるとはいかに、ということです。
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