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2021年08月22日13:24

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3分小説「知ってた男」

「すべて知ってたってわけさ。ははははは」
 肩を揺らせて笑う男、右手に銃。

「俺が警察のスパイだって、知ってたってことか?」
 椅子に縛られた男、口の端から血、眼が腫れている。

「当然だ」
「いつからだ?」
「最初からだ」
「最初から?」
「そうだ。警察に内通者がいる。そいつからすべて報告を受けていた」
「そんな筈は無い!仮にそうだとしたら、この計画は最初から筒抜けだったということじゃないか?!」
「そうだ。筒抜けだ。俺はすべてを知っている」
「組長自身が、組の掟を破って麻薬の密売に手を染めていたことも知っていたのか?」
「そうだ」
「若頭の柏木が末期がんで余命3ヶ月だったことも、次の若頭に田所が内定してことも知っていたというのか?」
「そうだ」
「細田が仕切っていたマカオコネクションのことも、極道会がそれに関わっていたこともか?」
「そうだ」
「組織の情報を得るために、俺が組長の娘の久美子に近づいたこともか?」
「……そうだ」
「じゃあ、久美子と俺が肉体関係にあることも知っているっていうのか?」
「え?……そうだ」
「久美子のお腹の中に、3か月の赤ん坊がいるっていうこともか?」
「ええー?3か月ってことは……いや、そうだ。当然知っていた」
「ああ見えて着痩せするタイプで、実はGカップあるっていうこともか?」
「え?隠れ巨乳じゃん……いや、そ、そうだ。知ってた」
「じゃあ、あんな恥ずかしい場所にほくろがあることもか?」
「ええー?!恥ずかしい場所って……え?どこ?体のどの辺?……い、いや知ってた」
「俺と結ばれるまでは処女だったことも、俺が色んなテクニックを仕込んでやったことも――」
「や、止めろ」
「とんでもないドM女で、かなりハードプレイじゃないとあの女は――」
「やめろー!聞きたくない!」

 頭を抱え蹲る。手から銃が滑り落ちる。
 縛られていたはずの男、椅子から立ち上がり、銃を手に取ると蹲る男の額に銃口を押し当てる。
「え?」
「あの程度の拘束、俺なら簡単に抜けせるってことも当然知ってたんだよな?」
「時間稼ぎだったのか?お前、俺が久美子さんに密かに想いを寄せていたってことを――」
「ああ、知ってたさ」

 ずぎゅん
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