フランソワ・オゾン監督最新作。1985年夏、仏ノルマンディー海岸沿いの小さな町が舞台。ひとりヨットで沖まで出た16歳のアレックス、遭難の危機から救ってくれたのは雑貨店の息子18歳ダヴィド。やがて惹かれ合うふたり、次第に友情をこえた感情が芽生えてくる…。原作はエイダン・チェンバーズの小説「おれの墓で踊れ」。
ある苦境に陥った現在のアレックスから始まるも、物語のほとんどは85年夏の出来事を追っていく。ただときおり場面は現在のシリアスな空気に戻され、いったい彼の身に何があったのかという興味が観る側の気持ちを引っ張っていく。したがって周辺の人間の表情の変化や、ちょっとした小道具の登場にも緊張感が生じてくる。
自らゲイであることを公表しているオゾン監督が、この原作小説に出会って大いなる影響を受けたのが17歳まさに1985年。彼自身がどこまで投影されているかを探るのも味わいどころのひとつ。そして物語のキーとなるある楽曲。我々からすればいまさら感があるのだけど、80年代中盤フランスの感覚では違ってくるのだろうか。
つい先日、邦画「かば」にて1985年大阪・西成の夏を味わったばかり、そういえば季節は秋ながら「バック・トゥ・ザ・フューチャー」における“現在”も1985年の米カリフォルニア。そして今回はパステルカラーが美しくもはかないフランスの海岸。様々な1985年、すべてにおいて躍動するのはティーンエイジャーということですね。
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