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2021年08月20日14:45

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「ドライブ・マイ・カー」〜巧みなハンドルさばき

村上春樹短編小説の映画化。濱口竜介監督はタイトル作と他の短編2作を巧みに織りまぜ、179分の長尺作品に。妻を亡くし喪失の日々を送る舞台俳優で演出家の家福(西島秀俊)は、ある演劇祭の演出を担当。開催地の広島まで愛車を走らせるも、当地では専属のドライバーみさき(三浦透子)が待っていた…。カンヌ映画祭脚本賞受賞。

物語は大きく3つのパート。家福がありし日の妻と過ごす東京、彼が多国籍役者によるチェーホフ作品に取り組む広島、そしてそれまでは無愛想だったみさきの存在がぐっと大きくなる終盤部分。家福の気持ちの揺れのなかに、妻の不在とみさきの存在、まったく接点のないふたりが反射しあうところがこの作品の大きな味わいどころかなと。

ビートルズのタイトル曲は使用不許可だったらしいが、むしろそれで良かったのでは。あの曲とこの作品の手ざわりはあまりにも違うような。そのぶんときおり流れるインスト曲(by石橋英子(!))が心地よく、沈黙だけがしばらく続くいくつかのシーンにしっかりとした意味が感じられるのは、これまでの濱口作品と同様の巧みな職人技。

物語終盤2つのシーンでの長ゼリフは、大げさながら現在の日本あるいは世界にたいするメッセージのように思え、観る側の想像力を喚起させるオーラスのワンシーンは、そのメッセージにたいする作り手からの解答のひとつかなと。179分はあっという間だったという前評判にうそ偽りのない、奥の深い人間ドラマだったように思います。
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