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2021年08月16日17:34

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生き延びた者の使命 ( 映画『復讐者たち』)

昨日の「終戦記念日」
しつこい雨も昼前から小休止したのを幸い、偶然にも戦争絡みの映画を続けて2本観てきました。

本作はタイトル通り、「ホロコースト」すなわちナチスによるユダヤ人虐殺を生き延びた者たちが終戦直後に、ドイツ人へ復讐するためのおそるべき計画を描いたもの。
もちろんこれは、イスラエルのユダヤ人社会でも今もって明らかにされていない「風説」を元にしたストーリー。

主人公のユダヤ人マックスは、収容所で離れ離れになった妻子がナチスによって殺されたことを知り、復讐を決意する。
彼が偶然に出会い、迎え入れられたのは、英国が組織したユダヤ人たちで組織される「イスラエル旅団」
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イタリアから転戦し、ドイツ本土に駐留していた彼らは有志によるヒットチームを組織し、ナチスの戦争犯罪に加担していたと思しき「容疑者」たちを密かに処刑していた。
僕はこれについては歴史本などで仄聞はしていた。捕虜収容所の食事に毒を混入した事件なども。

しかしマックスは、より過激な報復活動をするユダヤ人組織「ナカム」に参加する。彼らは、とある市の水道に毒を放ち市民達を大量殺害する計画「プランA」を企てていた。
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個人的な感想から先に述べますが、実録歴史サスペンスとしては、どこか「もっさり」「小ぢんまり」とした印象。
自分が期待し過ぎたのかもしれないが、それでもクライマックスの「オチ」や、終戦直後もドイツで色濃く残っていた反ユダヤ感情、イスラエル建国への胎動(すなわち“計画”が実行されればそれも覚束なくなると反対する勢力との確執)などは見所か。

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マックス役のアウグスト・ディールの鬼気迫る演技も良かった。だからこそ台詞が全編英語なのが惜しいし、彼が死の収容所から出たてにしては顔色も元気も良過ぎるのでは? 水道に毒を入れて市民を皆殺しにするにはどんな毒物がどれだけ必要なのか?(希釈されてしまって、効果が期待できるかどうかあやしい)、というツッコミどころもある。しかし知られざる歴史の闇にフォーカスし、今までこういう「古傷」がタブー視され、ホロコースト系映画がほとんど作られなかったイスラエルの制作というのには注目してもいいと思う。

何よりも最後に導き出される「生き残って新しい人生を築くことが復讐」という諦観。その後に映し出される「生還者」と思しき老人達の表情が無言のメッセージであるかのように、心に静かに響いた。

フォト【予告編】https://youtu.be/YGmLZd-JmtQ

〈テアトル梅田で公開中〉

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