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2021年08月13日09:24

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1481

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1481        

辻村深月 「青空と逃げる」           

辻村深月はデビュー以来僕はフォローしていて、
全作品を読んでいるわけではないが、ときどき
作品を手に取る。若いときから登場人物の人格
や言動の描写にすぐれた作家だが、近年一層
磨きをかけてきている。その理由だが、結婚と
出産にあると僕はみている。

本書は、30代後半の母親と小5の息子の逃避
物語だ。父親は小劇団の俳優だが、他の劇団の
公演にも出演することがある。そこで共演した
女優の運転でドライブ中に事故にあい、二人
ともケガし入院する。マスコミは不倫と報道し、
退院後女優は自殺、そして父親は失踪する。

アパートに押し掛けるマスコミと女優の事務所の
しつこい問い詰めに耐えられず、母親は息子と
一緒に逃亡することを決めたのだ。夫から
まったく連絡がこないことに加え、アパートの
息子の部屋には血がついた包丁が残されていて、
いろいろなことを考え母親は悩む。

逃避は、母親の友人がいる四万十川に始まるが、
女優の事務所の追っ手が来て、兵庫県の瀬戸内海の
島へ、さらに別府へと移動する。しかし、偶然の
できごとでそこもバレてしまう・・・。

息子は母親の言うがままに一緒に逃走するが、
逃避先でいろいろな人たちに出会い成長してゆく。
母親と息子との距離感がなんとも微妙だ。中学生
ほど世間のことを知っているわけではなく、
小学校低学年ほど幼くもない。そして娘だったら
母親との距離がもっと近いのではと思う。

近年の作者のホームラン級の作品に比べると、
ヒットではあるが長打でなく物足りなさがなくも
ない。しかし、読んで後悔するようなことはない
佳作である。



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