母親 この世の名残り3選

残された長男が勝手に思っているだけ、あの世の母親は苦笑しているに違いない。ゆっくりゆっくり坂道をくだるように84年の人生を閉じた母親、最期の2日ほどはちょっとツラかったけど、いま思えば残された者にとっては一番いい逝きかたをしてくれたなとしみじみ。入院先での最期の数か月のあいだに交わした会話から。

◎天ぷら まきの（難波千日前店）
ブレイク後しばらく、ミナミに進出してきたあたり。安くておいしい天ぷら屋があるから元気になったら連れてったると。アツアツのご飯のうえに崩しながら、上から天つゆを少しだけ垂らしていただく玉子天は、まちがいなく母親のお気に入りとなったに違いない。そういえば弟夫婦と一緒にお見舞いした帰りにも夫婦2組で立ち寄ったな。

◎植田海（阪神タイガース内野手）
2018年シーズン開幕、すでに母親はけっこう弱っていたはず。それでもベッドサイドのテレビで野球だけは見ていたようで、あるときふいに「植田海、ええね」と、ぽっと出の選手の名前をしっかり憶えていたのにはビックリ。たしかに小柄な二塁手というのはいつの時代も母親のお気に入りだけど。いろんな意味でガンバレ、植田海！

◎映画　ボヘミアン・ラプソディ
「こんどクイーンの映画来るで、元気になったら観に行きや」と知らせた記憶が。ふだんロックなど聴かない母親だけど、華麗なるオペラパートのおかげでこのタイトル曲だけは別モン。以前”スマホというのは動画もキレイに映る”と示すときにも、この曲のPVを母親に見せたはず。元気だったらマジで母親はひとり観に行ったと思います。