この暑い夏、オリンピックもすったもんだしながら、閉会を迎えます。フランク永井の出るテレビ番組は、先週に触れたばかりです。ご本人はなかなか、出演してくれません。今回紹介する番組も、同じなのだが、タイトルに名前が出ている、2時間番組です。
7月30日に、BS-TBSで放送された番組です。「五木ひろしが選び歌う石原裕次郎・フランク永井とムード歌謡名曲集」。タイトルのように、五木ひろしが全面的にしきり、自ら歌うという番組です。五木ひろしファンにはたまらない人気の番組です。
現役の歌手では、五木は押しも押されもせぬ大御所になっています。長い歌手生活もそうですが、歌謡界の歴史やうんちくを語ることにおいては、欠かせない存在となっています。番組を持つ、ということでは、このコーナーでよく紹介している「武田鉄矢の昭和は輝いていた」の武田とならんでいるのではないでしょうか。
五木はフランク永井を称えています。敬意をもって、ずいぶんとカバーもしています。また、先に話題にしたように、恩師吉田正がご健在のおり、次世代のフランク永井探しをトライしたときに、候補にあがり、恩師自らがフランク永井の歌の指導をしています。
五木は、そうした経緯から、フランク永井のヒット曲を多数カバーし、レコードを出しています、この五木が、ムード歌謡に焦点を当てて、番組を構成するときに、いろいろと悩まれたようです。その様子は、石原裕次郎と組ませて、ベストテン方式で16曲を順位付けしているところでしょう。
つぎが、彼の選んだベスト15です。
01 夜霧よ今夜も有難う
02 有楽町で逢いましょう
03 北の旅人
04 おまえに
05 二人の世界
06 赤いハンカチ
07 霧子のタンゴ
08 ブランデーグラス
09 東京ナイト・クラブ
10 夕陽の丘
11 粋なわかれ
12 大阪ろまん
13 夜霧の慕情
14 夜霧の第二国道
15 恋の町札幌
ご覧のように、デュエット曲では「東京ナイト・クラブ」はありますが「銀座の恋の物語」はありません。リストにはあげてませんが、特例で裕次郎の映像を流しています。しかも、裕次郎が女性のパートも含めて一人で歌うという、レアなモノクロ映像を出しています。
夜霧に消えたチャコ、東京午前三時、西銀座駅前、Woman、旅愁…、フランク永井の世に知れたヒット曲は、まだまだ多数あります。これらをしりぞけて、バランスをとったのではないかと思えます。
裕次郎をフランク永井に並べて出せば、そのスーパー・スターぶりにおいて、残念ながらフランク永井は及びません。歌ばかりではなく映画でも超人気を博した実績は、日本の芸能史でも別格な人だからです。
それでバランスを工夫した様子が察せられます。
裕次郎の特別映像をだすのなら、フランク永井の映像出演もあってもいいと、期待しながら観ましたが、それはなしでした。まあ、基本は、五木が「自分で歌う」というのが柱なので、止むをえないですね。
五木の歌については、幾度も触れてきましたが、文四郎的には、彼の歌を続けて、何曲も聴くのはつらいのです。彼は歌で苦労しただけあって、自らの歌への姿勢を「五木節」と呼ばれる形にし、それを、歌う際にすべて貫いています。
基本は、歌を聴いたものに「こころをつかみ、引き入れる」ことではないかと、勝手に解釈します。歌い方に対する、絶妙な、微妙な感情操作を加えて、技術的に表現をコントロールします。前提として歌う力量があっての技です。
だから、一曲単位で歌う曲は、常に「五木節」による完成を実現しています。彼のヒット曲を、どの一曲でも聴けば解ります。しかし、「こころをつかみ、引き入れる」というのは、聴く人の胸にとって、その押しの強さから「苦」を感じます。
かつて、キム・ヨンジャと島津亜矢についても書きましたが、押しの強さは、ときには「おせっかい」にも転化するのです。フランク永井の歌は、押しつけがましさがなく、いわばBGMです。ゆったりとくつろいで、気を落ち着かせて、歌を鑑賞したい気持ちのときに、他人から心臓を握られ、揺さぶられたくはないものです。
ということで、五木の歌は間をおいて、数曲聴く分にはいいのですが、続けて聴くのはつらいのです。そのようなことから、彼が出演して歌う番組を見てても、数曲聴いたら終えます。誤解がないように、お願いしたいのは、五木ひろしのことを、何か否定的にいっているのではありません。あくまでも、文四郎的な個人の感想です。まあ、歌については、毎回のように言っていますが、個人の嗜好品ですので、感想は各人の自由です。
五木がフランク永井に敬意を払っている証として、もう一つ指摘しておきます。それは「有楽町で逢いましょう」の初版の編曲者である佐野鋤(すき。その後、佐野雅美)のご子息の佐野博美を、ムード歌謡には欠かせないテナーサックス演奏者として、特別に紹介しています。
「有楽町で逢いましょう」は、後にステレオ時代になった際、吉田正が自ら編曲して録音していますが、初期モノラル版は佐野のものです。吉田の卓越したメロディーがあり、イントロは彼が注文した雨の音を、佐野が印象的に色付けしたものです。五木の姿勢を垣間見た感じです。
今回の番組では、通して観てしまいました。やはり、フランク永井の歌がどう歌われるのか、という期待です。そうした念願に、希望を添えてくれたのは、ゲストです。特に秋元順子の出演には拍手でした。
彼女は、歌がうまく、カバーでは抜群の力を発揮しています。今回は、キーのあわせがこれは考えた方がいいのでは、というのは見受けられましたが、それでも、満足いく歌唱を聞かせていただきました。「有楽町で逢いましょう」「おまえに」は、秋元に歌って(デュエットではなく)ほしかったです。
いろいろ言いましたが、このような番組を作ってくださるのは、大歓迎です。ありがとうございました。
ログインしてコメントを確認・投稿する