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2021年08月04日19:07

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無名の人たちの勇気 ( 映画『アウシュヴィッツ・レポート』)

ナチスによるユダヤ人虐殺「ホロコースト」を描いた映画は、いったい総計して何本作られたのだろう?
もはやひとつのジャンルと言っていいくらい手を変え品を変え、という感を抱いて正直「またか」と思ってしまう時もある。
だけどそれは映画屋が食いける題材、という以前に語り継がねばならない永遠のメッセージを作り手が込めているのだから、やはり襟を正して観ねばならない。

そして、アンネ・フランクやプリーモ・レーヴィのような有名人から無名の一市民たちまで、人の数だけ物語が在るということも。
この映画は無名の人たちの知られざる事実。

第二次大戦下、かの「アウシュヴィッツ強制収容所」で夥しい数のユダヤ人たちが劣悪な条件のもとに収容され、殺されていたことをほとんどの国が知らなかった。
ナチスによるユダヤ弾圧はそれとなく知られてはいた。しかしユダヤ人迫害じたいはロシアをはじめ昔から行われてきたことだから、おそらく「その程度」だと思われていた節がある。

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収容者のひとりで、遺体の記録係をしているスロバキア人アルフレートは、この実情を何としても外国に伝えようと、仲間と周到な計画を立てて脱出に成功する。
生きるか死ぬかの逃避行で、幸運にも恵まれながら彼らは隣国ハンガリーに辿り着く。
ハンガリーはドイツの同盟国だが独立を保ってはいるので、現地の赤十字に彼らは「レポート」を提出し惨状を訴えるのだが、そのあまりの凄まじい内容が逆に信じてもらえない。
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実は僕が観ていていちばん重要な場面がここだと思った。
自分たちの想像を越えた“実情“、それはなかなか受け入れ難い。甚しきは「これはフェイクニュースだ」と取られかねない。アルフレートたちのせっかくの労苦が水の泡になるのではないか?という切なく虚しい緊張感がひりひりと伝わってくる。「信じ難い真実」が理解されることの難しさ。それは今なお世界の至る所にあり、全貌が知られてない人権弾圧の実態に通じることではないか。

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過酷な収容所内の設定、生ける屍のような囚人たちの姿、胸が締め付けられるような緊迫感は、これまでの同種の映画以上にハードな演出だ。それもそのはずなのか、監督のペテル・ヤブベクは日本では無名だけど、それまでサスペンス/スリラーばかり作り続けた人。
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もちろんスロバキア人の彼だから、その手腕を最大限に活かしての渾身のメッセージだったのだ。それはエンドロールの音声コラージュでも。それは何か?ぜひ観ていただきたい。

フォト【予告編】https://youtu.be/uODr_CCuvPI

〈シネリーブル梅田、なんばパークスシネマで公開中〉

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