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2021年06月08日08:42

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1469

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1469        

山本功次 「開化鐡道探偵」
「開化鐡道探偵第102列車の謎」      

日本のミステリーには鐡道ミステリーという
ジャンルがあり、松本清張や西村京太郎などの
作家が主に鉄道ダイヤを駆使したアリバイ工作を
テーマとした作が多い。

本作品も鉄道ミステリーなのだが、時代が大きく
異なる。日本で最初に鉄道は敷設された頃、
明治初期の話であることが異彩を放っている。

新政府工部省の鉄道局長の井上が元八丁堀の
同心の草壁にある事件の捜査を依頼する。
鉄道局では神戸〜京都間の鉄道はできたが、
その延伸工事を行っており京都〜大津間の
工事をしている。逢坂山で初の鉄道トンネルを
つくるべく穴を掘っているわけだが、そこで
資材盗難などの事件が相次いでおり、その操作を
鉄道局技師の乙松とともに草壁は行うこととなった。

明治初期の社会や政府の様子が興味深い。維新に
より武士の地位を奪われた士族の反乱があり、
新政府内の薩摩と長州の主導権争いがあり、鉄道
という新たな輸送手段に反対する運送関係者もいる。
これらの要素が事件捜査に絡まって、作品を厚く
している。

1作目が好評だったのか2作目もつくられた。
逢坂山トンネル事件から6年後、草壁は乙松と
ともに再び井上局長に事件捜査を命じられる。
今度は新設の品川〜高崎戦における脱線事故だ。
明らかに人為によるものだが、それだけではない。
生糸を乗せた貨車の中に千両箱が1個入っていた。

2作目では、反乱士族に加え反政府の自由党の
人々が登場し、徳川幕府の埋蔵金伝説も絡んで
来るという重層的な展開だ。そして新たなメンバーと
して新婚の乙松の若妻も登場し色取りを添える。

科学捜査がない時代の事件捜査であるが、草壁は
関係者の言動をしっかりと頭に入れ真相に迫る。

2作とも最初ハードカバーで出版され、その後に
文庫本化された。3作目も期待したい。

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