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2021年06月04日09:03

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ファーザー

 世評高い「ファーザー」、ようやく観ることができました。
 掛け声ばっかりでクソの役にも立たない緊急事態宣言のせいで、もしかしたら観られないかも?なんて思いましたが、まずは安心。

 どなたかがTwitterで本作の事を「認知症・ザ・ライド」と評していたのを見かけましたが、これ、ホントにそうでしたね。
 認知症高齢者を描いた作品はこれまでにも多々ありましたが、それはどれも介護者側からの視点で描かれたもの。しかし本作は認知症を発症した当事者の視点が取り入れられており、そこに少なからず驚きを感じました。
 ただ・・・、これってやはり想像の域を出ないものではあるんですよね。
 なぜなら、認知症高齢者の見たもの感じたものを私達が直接的に「知る」ことは不可能だからです。生者に死後の世界を知る事ができないのと同じで、私達には当事者が「周囲をどう見て、どう認識しているのか」を完全には把握する事ができないのです。

 もっとも、そのことを作り手は先刻承知なので、「これが認知症だ!」という大上段の構えは取っていません。あくまで主人公アンソニーの混乱、不安、苛立ちを観客が共有できるよう「何だかヘンだぞ?どうなってんの?」的な状況を積み重ねるのみに留めています。不条理な展開に対し回答は示しません。
 何度も繰り返し登場するチキン料理や、アンソニーの腕時計に対するこだわりなど、多くの謎が提示されますが、それらの解は一切ないんですね。小賢しい謎解きをひけらかし、認知症ってこうなんですよー、わかりましたー?と解説するような愚を犯していないところに、本作の作り手の良識を感じます。

 大変な力作であり秀作である「ファーザー」ですが、実はちょっと疑問に感じていることがあります。
 これは本作のみならず他の高齢者ものにも言えることなんですが、どうしていつも主人公が知的職業に就いていたとか、教育レベルの高い人限定なんでしょうね。
 例えば「長いお別れ」の山崎努は元教育者でしたし、「ジャッジ 裁かれた判事」のロバート・デュバルは元裁判官。労働者階級の高齢者がこの種の作品の主人公になったことってありましたかね?脇役としてならあったかも知れませんが。
 あと、排泄の件。
 アンソニーは歩行に問題はなく、食事も介助無しでできていたので、排泄も自立しているのかな?とは思ってましたが、途中で更衣に失調が見られましたね。ああなると尿意や便意を自覚することもやや難しくなるのでは、という気がするんですよ。
 認知症高齢者の介護というと排泄介助は欠かせない要素なので、そこが完全に省かれているのが、ちょっと気にかかりました。
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