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2020年11月15日07:56

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ご当地映画

 昨日、新所沢レッツシネパークさんで、沖田修一監督の最新作「おらおらでひとりいぐも」を観て来ました。
 カミさんと二人で映画に行くのは6月の「ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語」以来。
 でも、久しぶりに一緒に観たのがこの作品で本当によかったと、心の底から思います。

 早くに連れ合いを亡くし、恐らくは築40年くらいであろう一軒家に一人で住んでる、日高桃子さん75歳。
 本作は、ひっそりと静かに暮らしているように見える彼女の、実は意外に賑やかな「脳内生活」を、ものすごーくスペクタキュラーに描いています。

 最近、とみに増えている、独居高齢者。今や高齢者のみの世帯は1140万にも達し、単身世帯はそのうちの3分の1とも言われています。
 桃子さんも、その一人。
 寂しいだろうな、孤独だろうな、と普通は思いますね。
 でも、彼女の脳内はとても賑やか。何かというと彼女のイマジナリーフレンド「寂しさ1」「寂しさ2」「寂しさ3」がしゃしゃり出て来て、桃子さんを励ましたり冷やかしたりからかったりするのですから。
 岩手県遠野市の生まれでありながら長い事方言を封印して来た桃子さんに東北弁で話しかけ、彼女が東京オリンピックを回想するときはあのファンファーレを演奏し、握り飯を作るときはしっかりとお手伝い。本当に気のいい連中です。これはきっと、桃子さんがとても心根のいい人だからでしょう。

 でも、彼女の心にはどうしても埋められない穴があります。
 それは、亡くなってしまった夫・周造のこと。
 同じ東北出身で、都会に来ても大らかに方言を使う彼に惹かれた桃子さんは、ほどなく彼と結婚、息子と娘に恵まれます。
 しかし子供たちは独立し、夫はもういない。広い家の中で、桃子さんは一人きり。
 彼女は、寂しさたちにこう言います。
 「これは、夫の『計らい』なんだ。『お前は本当は一人で生きたかったんだろう。だから、そうさせてやる』。そういうことなんだとおらは思って、夫の死を受け入れるんだ」

 地球上に生命が誕生してからの長い年月、いろんな生き物たちが生と死を繰り返してきた中で、私達は生きている。特に人間は「寂しさ」だの「悲しみ」だの、厄介な感情を抱えてそれに苛まれる。
 結局生き物は一人で生まれ、一人で死ぬ。そうなれば、共に生きて来た者はどちらか一方が遺される。そういうものなんだ。
 だったら、遺された者は生きて行け。可能な限り、生きて行け。いろんな形で自分の気持ちに折り合いをつけて、しぶとくしぶとく生きて行け。
 きっと桃子さんもそう思って、これからも毎朝、目玉焼きを焼くのでしょう。

 ちなみにこの作品は、埼玉県所沢市を舞台にしています。
 ここは、私達夫婦の暮らす街です。
 それが、この素敵な作品を彩る場所として選ばれたことを、とても嬉しく思います。

 帰りに、つい先日できたばかりの、トトロとネコバスのブロンズ像を見てきました。
 こんな風に、いつまでカミさんと機嫌良く暮らせるかはわかりませんが、今はとにかく、このささやかな幸福を何も言わずに享受して暮らす事にしましょう。

 
 
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