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2020年11月07日15:30

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「おらおらでひとりいぐも」〜75歳の脳内宇宙

若竹千佐子の原作小説をすでに読まれたかたにはどう映るのだろうか。実験作とは言わないまでも、なんとも奇妙な味わいのあるファンタジックな作品。岩手に生まれ、1964年東京五輪の年に上京、夫に先立たれたあとは郊外の一軒家で孤独に暮らす桃子さん(田中裕子)75歳の日常とその心象風景。監督は「モリのいる場所」の沖田修一。

あとから考えれば、なんてことはないほぼ1年の日常を追った物語。ところが桃子さんの脳内宇宙は銀河系より果てしなく、その精神世界は起伏に満ちている。その具象化と言うべきか、寂しさ1・2・3という名の3人(濱田岳・青木崇高・宮藤官九郎)がおりおりの場面に登場。彼らは狂言回し的存在そして「白雪姫と7人の小人」的スタンスでもあり。

いきなり面食らったツカミをはじめ、アニメやCGを駆使しながらの超常現象がいくつも展開。筋立てにはそれほどの起伏が待っているわけではないから、観る側は桃子さんの喜怒哀楽模様に身を委ねるだけだ。現実の同世代女性、市井の75歳女性にとってこのハジけっぷりは刺激になるのだろうか、それとも呆れかえるだけだろうか。

最初から最後まで出ずっぱりの桃子さん。なかには怪演めいたものまでが混じった田中裕子のひとり舞台。このところは実年齢よりも年上の役柄が多くなった彼女だけど、今回が15年ぶりの主演とは意外。そして若き日の桃子さん役には蒼井優、なにやらこれは日本を代表する演技派名女優の系譜を観るがごとし。ふたりの初共演をお楽しみください。
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