今日から新宿武蔵野館で始まった「ジャン・ポール・ベルモンド傑作選」。
さっそく、行ってきましたよ。
今日観たのは、名匠アンリ・ヴェルヌイユ監督のアクション・スリラー「恐怖に襲われた街」。
日本では1975年に公開されて以降は劇場上映はおろかソフト化もされず、永く日本の観客の目に触れる事のなかった作品です。
凶悪な銀行強盗犯を追っていた刑事がひょんなことから女性をターゲットにした連続猟奇殺人犯をも追わねばならなくなり、2正面作戦で奮闘するという、まあかなり荒唐無稽なお話なんですが、猟奇殺人犯がなぜかダンテの「神曲」に心酔していて、その作中に登場する処刑人「ミノス」を名乗るというのが面白く、また、その犯人の顔をかなり早い段階で観客にバラしておいて、その人物が平気な顔して刑事の前に現れたりするというシーンを用意することでサスペンスを盛り上げるってのが、いいですね。
スリラーとしても出色の本作ですが、もちろん、アクションも凄いです。とんでもないです。
特にミノスとの、屋根の上での追っかけ合いはもう手に汗握ること間違いなし。「ルパン三世 カリオストロの城」にルパンがカリオストロ城の巨大な屋根に登るシーンがありますが、あれを実写で、しかもベルモンド本人がやってるんですよ。観ていて、2.3回は尻が椅子から浮き上がりましたぜ。
さらに凄いのは、逃亡中の銀行強盗犯を追って、地下鉄の屋根に乗っかるシーン。もちろん、これも本人がやってます。後にスティーヴ・マックィーンが遺作「ハンター」で同じようなアクションをやってましたが、彼、絶対にあれを観てますね。
クライマックスでは、有名なポルノ女優とその家族を人質にしてタワーマンションに立てこもるミノスをいかにして捕えるか、というサスペンスで押しまくります。
とは言うものの、ここは割と淡々としたもので、ヘリから宙づりになるというスタントはあるものの、意外に地味。巻切れも、凄くあっさりしてます。
でもねえ、それがまた、いいんですわ。このあっさりさっぱり感がいかにも「70年代」なんですよ。アメリカ製刑事映画「フレンチ・コネクション」も、「破壊!」も、「マックQ」も、どれもエンディングはポン!と終わる感じでしたもんね。
あのあっけなさ、素っ気なさ、何とも言えぬ乾いた味わい。70年代刑事アクションにはガキっぽい、ハシャギまくった終わり方は似合わんのでありますよ。
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