ずうっと、今日の発売を楽しみに待ってました。
吉田秋生の新作「詩歌川百景」。
あの名作「海街diary」と同様、ちょっとグレーな「人の世」のあれやこれやを清廉さとビターな味わいを交えて描いた素晴らしい掌編集です。
山形の小さな温泉街を舞台にしたこの作品の主人公は、由緒ある温泉宿で「湯守り」の見習いをしている青年・和樹。そんな彼には、今、ちょっと気になる娘がいます。
彼が勤める宿の大女将の孫で、数年前に東京から越して来た高校生の妙。
祖母の宿でバイトしながら明るく振る舞っているけれど、少し影を宿した彼女に、和樹は振り回されっぱなし。
そんな二人の関係を主軸に、物語は様々な老若男女のドラマを絡めて進んでいきます。
過去の吉田作品と同様、ここでは魅力的な脇役たちのちょっと笑えるエピソードが提供されたかと思えば、親子や兄弟、親類縁者の確執がヒヤリとするような筆致で描き出されたりします。
田舎の小さな街でざわざわとさざめく人々の心、この世とあの世の境目で見え隠れする神秘の影、そういったものが吉田氏独特の「線」できりりと紡ぎ出された新シリーズ、これから先がどうなるか、楽しみでなりません。
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