日本の企業が世界中のあらゆるものを買い漁っていた1990年、レナウンは英国の老舗メーカー、アクアスキュータム(以下AQ)を買収した。日本で英国製の高級コートといえばバーバリーがダントツの知名度を誇るけど、綿生地や仕立てがしっかりしていて長年の酷使にも耐えるAQのトレンチコートも通好みの人気商品だ。
80年代を代表する名盤、スタイル・カウンシル「カフェ・ブリュ」のジャケでポール・ウェラーが着ているコートもAQ製。労働者階級の日常を歌ってきた彼が高級老舗ブランドとは…当時はうがった見方もいろいろあったけど、ただ単にカッコよかっただけかも。ちなみにレナウンは10年ほど前にこのモデルを期間・数量限定で復刻発売している。
レナウンが買収する前にAQを長年取り扱ってきた某社は、私にとっての在京時の担当取引先のひとつ。業界では日常茶飯事のこと、某社でAQの企画を担当していたOさんは買収と同時にレナウンに引き抜かれた。某社時からのよしみを利用し、私は手を替え品を替え(というほど商売上手でもなかったけど)Oさんのもとつまりレナウンに足を運んだ。
でもレナウンのような大企業がウチなど相手にしない。AQに関する欧州素材はすべて誰も知る大手商社が輸入という決めごとがあったのだ(買収に裏で動いたのもたぶんこの商社)。そう、いまでもレナウンというと松尾スズキに似たOさんの、いつもすまなそうにする優しい笑顔、そして渋谷の南端、山手線沿いにあったオフィスを思い出すのです。
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