我は我を定義する
「黒猫の瞳に映る者也」と
ビルがビルを喰らい街は淀む
光狭まりて我らの項に漆黒を垂らす
涙といえしものその透明すら失い
幼子は嬉々として腹に虫の死骸をつめこむ
すべての植物がモヤシ豆の如く痩茎を捻り
川は須く暗渠となり果て濁音滾らせ
生きとし者皆呼吸の一つを二つの咳と交換せり
嗚呼
『神は死んだ』と言った者よ
汝に請う
もう一度そこに行って
本当に神が死んでいるか確認してきてくれ
そうしてもしも生きていたなら
今度こそはっきりとトドメを刺すのだ
汝の責務なり
贖罪なり
信仰に縋りし者への
せめてもの手向けなり
骸骨に黒皮を張り付けただけの猫
我の横たわる傍らを通り過ぎる
このセカイの光
猫の眼にも残ってはいない
猫の眼にも残ってはいない
而して我の目にはもはや
その猫すら映ることはないのだ
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