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2020年01月13日20:23

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TONJIL 〜人生を救った一杯の奇跡〜

木のお椀を押しいただき
湯気ごと啜る
ずずず啜る
沁みる
沁みわたる
駆け巡る
暖まった血液が体中を駆け巡る

凍えた指先にポツリと熱が宿る
まるで北海の暗海に差す灯台の光明のよう
胃の中がオレンジ一色に染まるのがわかる

具材達の「お疲れさま」
薄切り大根は頼れる先輩
引き締まった豚肉は辣腕の女部長
人参は元気いっぱいな後輩
蒟蒻は気心の知れた友
味噌は母親からの手紙

玉葱長葱甘い微笑み
喉の奥まで届く里芋のねっとりとした口づけ
時にピリリと檄飛ばす一味の真剣さ
まさしく恋人の面影

みんなの労いの言葉を聞きながら椀を傾ける
ずずず飲み干した
はっと溜め息を吐く
その濃さに目を細める
白煙のような息だ

散々だった
失敗と挫折
孤独と後悔
その一生分を生存日数で割った数値が紛れもなくこの体に蓄積された今日という日
回復不可能のダメージをたった一杯が救ってくれた
1Day/一生に報いを与えたもう奇跡



「明日も生きよう」
と思う
この一杯との再会と再開のために
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