アルトゥーロは傷害事件を起こし出所したばかりの一流シェフ。更生のため命じられた社会奉仕は、アスペルガー症候群の自立支援施設に入所する青年たちに料理を教えること。彼らのなかでもっとも秀でていたのが天才的味覚の持ち主グイド。ただぶっきらぼうなアルトゥーロと何事にも几帳面なグイドはソリが合わず、まさに水とオリーブオイルの関係だった…。
グイドが出場をきめた若手料理コンテストに向かって揺れ動くふたりの距離、それぞれのプライドそして徐々に芽生えてくる絆が味わいどころ。料理をメインテーマとした作品にしては、お皿に美しく盛られた料理そのものがあまり映し出されなかったのが残念。まあこれに関して言えば、食べもの作品にありがちなウンチク垂れ流しがなかったぶん良しとするか。
そう、むしろ料理の場面よりも、ふたりが何度となくクルマで走りぬくトスカーナ地方の緑溢れる丘稜風景が見ものかも。以前私も仕事で革製品の工場が点在するこの美しいエリアを何度か訪れたけど、運転するミラノ駐在員がイタリア生活になじんでいることを誇示すべくやたらと飛ばしたので、ワインに酔ったあとクルマにも酔うハメになったことたびたび。
脇役もくっきり、気くばりの効いた演出を混ぜつつ全体的にクドさはなく、口あたりのいい感触、ほぼ思っていたとおりに物語は進むも最後にひとひねりといったところ。そして一件落着、彼らふたりにとってはとてもそんな状況ではないにもかかわらず、そこにはさっぱりとしたジェラートのような、さわやかなラストシーンが用意されてました。
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