「まいどおおきに針中野食堂」の夜

先週末、出前講座のあとはすぐ近くの「まいどおおきに針中野食堂」に流れた。いまどこの街角にもある一膳飯屋風のチェーン系定食屋。もちろんかってこんなお店はなく、たしかここは婦人用品店だったか。とにかく空腹だった我々はいきなり定食をオーダーした。というかこの手のお店は定食各種と丼・麺類・飲み物以外はちょっとした小鉢ぐらいしかない。

そう、本来ならササッと定食を平らげて立ち去るべきお店。けっこう空いていたのをいいことに、我々はまるで居酒屋にいるようにネバってしゃべり倒した。生ビールがぐんぐん進むひとはまだいい。ノンアルコールビールはおろかソフトドリンクも置いてなかったので、私は唐揚げ定食をいただいたあと水ばかり飲んでいた。なので650円しか出費していない。

結局閉店まぎわまでネバッたあと、我々はほとんど人通りのない真夜中の駒川商店街を駒川中野の駅まで縦断した。私は「このお店は○○ちゃんのウチ」「ここの店主は○○君」とシャッターが閉じた両側のお店を次々と指しながらみんなに説明していった。この商店街は我が東田辺小学校の校区にずっぽり収まっていたので、クラスの3〜4割は"お店の子”だったのだ。

少年時代をすごした懐かしの商店街を、半世紀を経たいまふだんもっともつきあいのあるみなさんと真夜中にブラブラ歩く…時間がどこかでねじれたような奇妙な感覚を私はひとり味わっていた。たとえばこれが小学校の同窓会のあと、なんていう状況だったらたぶんシミジミして終わっただけだろう。私にとってはまさに夢のなかで見る不条理を味わったような夜だったのです。