個性派俳優ポール・ダノ初監督作品。1960年代初め、米モンタナ州に暮らす親子3人の物語。職を失ったあげく家を出た父親(ジェイク・ギレンホール)、彼の不在のあいだ浮気に走る母親(キャリー・マリガン)、そして家族の崩壊に心が揺れる14歳の息子ジョー。彼を演じるのはエド・オクセンボールドという後退した頭髪の生え際が気になる18歳の若手男優。
この多感な年ごろのジョーの目線で物語は綴られていく。そしてそこにポール・ダノ自身の追想が投影されていることは、ボ〜っとした表情がふたりに共通していることを抜きにしてもたやすく推測できる。余計な説明をはぶき、彼のぼうぜんとした表情だけをアップにしたシーンが何度かあり、そのたびに観る側は想像力を働かせる…このあたりの演出は実に巧い。
そう、ふつう監督1作目ともなれば、それまでに貯めたアイデアをふんだんに盛りこみ、観る側にとってはそれが鼻についたりするけれど、この作品にかぎっては過剰な部分をいっさいはぶき、ポール・ダノの持つ繊細な感性を反映したかのような、静かで優しい一編に仕上がっている。それでも場面によってはいきなり大音量が響き、この妙なメリハリもまた彼らしいなと思う。
片田舎の出来事とはいえ、アメリカ社会が急速に変化した時代ということをふまえて観るのも一興。けっして安定しているとはいえない家庭にもかかわらず、立派な家屋に広々としたリビングルームそしてシステムキッチン。このとき日本は昭和30年代なかば、この彼我の差はやっぱり「憧れの国アメリカ」だったんだなと関係ないところでしみじみしてしまいました。
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