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2019年05月22日17:40

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遠くに行けなくたっていい ( 映画『ドント・ウォーリー』)

ううん・・・、この主人公ジョン・キャラハンが「もがき続ける」姿をスクリーン越しにひたすら観ている僕。
確かに見ていて、お気の毒なのはわかるけど、彼のどこに共感すればいいのか?ちょっと途方に暮れたのです。当初は。

後に車椅子の風刺漫画家として名を成す彼。しかしそこまでに至る道のなんと苦しいことか。
恵まれない境遇がきっかけでアルコール依存症になり、野放図な生活を送った挙句に交通事故を起こして半身不随に。
絵の才能に開眼し、それが立ち直るきっかけになるかと思いきや、車椅子の身になっても依存症は治らない。介護人に怒鳴りちらすのは日常茶飯事。

見ていてなんて鬱陶しくて面倒くさい奴なんだと思うことしばしば。だけど彼を「嫌な奴」「愚か者」たらしめているのは彼自身の弱さ、自己憐憫。
彼は断酒サークルに入り、それに気が付き克服する糸口を掴もうとする。少しずつだが光明が見えてくる。
自分の弱さに真っ直ぐ向き合うのは辛い。しかしそれを乗り越えて苛立ちや蟠りをどんどん解きほぐしていくと当然ながら心が広くなる。
そうか、この映画は「弱き者の救済」を描いているのだとようやく気がつく。
彼の心の支えは、その絵のセンス。風刺には優しさと自己韜晦が無ければただのヘイトだ。彼はゲロまみれの日々から抜け出して、その境地に達したのかもしれない。だからこそ、相変わらずクセは強くとも魅力的な人に生まれ変わったのかもしれない。

ただ、これは「話が出き過ぎ」じゃないかと思ったのは、彼には「アヌー」という綺麗なガールフレンドが障碍者になってからすぐ居るのですよ。どうして彼女が?という経緯が詳しく説明されないのが腑に落ちない。羨まし過ぎて現実味が無い(笑)
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彼女のような優しくて可愛いGFが側に居れば、そりゃあ立ち直る力になるというものだ。

むしろ、こっちがリアルだと(笑)思ったのは、断酒サークルの主催者である「ドニー」。毅然とした理知的な態度でジョンをアドバイスしていく彼がとにかく魅力的。
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愛してくれる人、導いてくれる人。救い難い人でも良き出会いがあればチャンスはきっとある。

ジョン演じるホアキン・フェニックスが本当に妙演。そして彼の事故の原因を起こす悪友役がジャック・ブラックというのも心憎いキャスティング。
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監督は今や名匠と言っていいガス・ヴァン・ザント。
僕にとっては7本目の彼の作品になるのだけど、彼の成熟した優しさがいっそう厚みを増してきたな、とまたしても感嘆させられる思いだったのです。

フォト【予告編】https://youtu.be/ASfwfdL_J94

意味のわかりにくい日記タイトルは、オリジナルタイトルに引っ掛けたものです(笑)

〈 シネリーブル梅田、なんばパークスシネマで公開中 〉


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