アカデミー作品賞ノミネートのひとつ。ジョージ・ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーの物語。彼を演じるのは役柄のため20kg増量したというクリスチャン・ベール。妻のリン役にエイミー・アダムス。そして当時の共和党政権の首脳陣、ブッシュ、ラムズフェルド、パウエル、ライス…みなあまりにもソックリ。監督は「マネー・ショート」のアダム・マッケイ。
誰しもがチェイニーに抱く重苦しさ、それを少しでも和らげるかのように実にテンポよく物語は進んでいく。楽屋落ちめいたものやほとんどおふざけに近い演出を交えてあり、カメラ割りや編集の巧みさもあって飽きることがない。この感触はどこかで味わったことがあるなあと考えていたら、そうかこれはややマイルドなマイケル・ムーア作品なのかもと気がついた。
やっぱり世の権力者をイジるにはこの手法ということか。米史上もっとも権力を持った副大統領と言われた主人公を際立たさせるという意味もあるだろうけど、ブッシュはきっちりとボンクラに描かれているし、まるで現場にカメラを持ちこんだかのような9・11直後の緊迫感あふれるホワイトハウスの騒然とした場面には思わず手に汗を握ってしまった。
イラク戦争における虚実さまざまという意味では、同じく現在公開中の「記者たち」と合わせ鏡のような。「記者たち」が真正面からホワイトハウスに突入した作品だとすれば、こちらは斜め後ろから侵入したような印象。どちらにしてもまだまだ生々しい現代史の一片を、堂々と商業ベースにのせてくるアメリカ映画のたくましさには脱帽するしかないなあと感じました。
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