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2018年12月06日08:05

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1310

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1310

梶よう子 「赤い風」                             

デビューして十数年、ほぼ毎年1冊の作品を著している
歴史時代小説の中堅どころの作家。

今回は江戸を離れ、珍しく農業をテーマにしている。

ときは江戸中期、舞台は川越だ。あたらしく川越藩の
藩主に就いた柳沢吉保は、将軍綱吉から将来を嘱望
される御側人。

川越藩の領内では秣場(まぐさば、牛・馬のための飼料や
堆肥のための草を採取する所)で、縄張りをめぐり
農民同士の諍いが40年以上も続いていた。頻繁に
暴力事件があり、ついには死者までも出てしまう。

自分の父を諍いで失った正蔵は、母や妹たちとともに
母を後妻とした新しい家に行くものの、厳しい生活を
しいられることに。

藩主は、諍いの場となっている原野を2年で畑地に
せよとの命令をくだした。この地は肥沃でなく、また
水場が近くにないので米は育たない。

藩主の命を受け筆頭家老の曽根権太夫は、村々の
名主の協力を得て開拓に乗り出す。藩外からも
人を集め開拓を進めるが、厳しい環境下でなかなか
進まない。

なかには博打に手を出す者が現われ、借金の担保に
土地を差し出すという事態ともなる。農民同士、
農民と武士との間もぎくしゃくしたものとなっていく。

以上がだいたいの大筋だが、脇役の人々も存在感が
ある。捨て子だったおそでは村の名主に拾われ同家の
奉公人となるが、正蔵と出会う。一度嫁入りし出戻りと
なるが、村に下屋敷を設けた家老の世話をする。
そして開墾のため大人となって村に戻ってきた正蔵と
再会する。

家老の曽根の嫡男である啓太郎は、最初は農民を
見下す態度をとっていたが、農民たちの土地への
思いを知るうちに、少しずつ武士と農民との垣根を
さげていくのも読みどころのひとつだ。

将軍の側近の荻生徂徠まで登場し、本筋とは
直接関係がないが赤穂浪士の吉良家討ち入りも
紹介され、時代背景がよく分かる仕組みとなっている。


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