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2018年10月23日09:00

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1301

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1301

古処誠二 「いくさの底」                      

この著者の作品を一度読んだことがある。第二次
世界大戦下のビルマを舞台にした話で、日本軍と
英印軍とのはざまで生きるビルマの人々がよく
描かれていたと記憶する。

この著者は第二次世界大戦における戦場ばかりを
著している。1970年生まれだから、もちろん戦争を
経験していないのだが、多くの資料を読み込んでの
執筆であろう。また、著者は元自衛官であり、その
経験も生かされているかもしれない。

今回も第二次世界大戦さなかのビルマ(ミャンマー)が
部隊だ。賀川少尉が率いる小部隊がビルマの小さな
村に入る。このあたりでゲリラ戦を展開する中国軍に
対処するためだ。

語り手は、通訳として臨時雇いされた商社マン。軍人で
ないので、いわば読者の代わりとして一般人の目で
軍隊の体質や行動を見てくれる役割だ。

賀川少尉は少し前に村に駐屯したことがあり、このため
村人たちとは顔見知りだ。過去の対応が良かったのか、
村人たちは今回の部隊を歓迎しているように見える。
     
だが、村に到着した夜にトイレで賀川少尉は殺害される。
凶器は村人たちが農作業で使っているナタだ。

いったい誰が少尉を殺したのか? 村人か、ひそかに
進入した中国軍か、あるいは身内の日本軍の誰か
なのか?

そして、少尉殺害から2日後に今度は村長が殺される。
犯人は同一犯なのか? いったい誰が、何の目的で?

連体本部から将校が派遣され捜査に乗り出す。
商社マンも通訳として関係者の面談に駆り出される。

村長の補佐をする3人の助役がキーらしい。そんな
彼らから少しずつ村の“特殊事情”が明らかにされて
くる・・・。

今の日本で戦場で戦った人は少なくなった。もちろん
僕も経験がない。そういった読者に対して、戦場の
臨場感、緊張感を著者はうまく著していると思う。
いつ死ぬか分からない中での人間の思考と行動が
戦場小説の肝である。

軍隊という組織の任務と、そこからくる命令の非情、
極限に置かれた兵士とは言えしょせん生の人間の
思考と行動。このあたりの描写が著者の真骨頂で
あろう。

直木賞と山本周五郎賞に何度もノミネートされ
ながら受賞に行き着いていないが、受賞もそう
遠くないと僕は思う。

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