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2018年10月02日08:23

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1298

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1298

若竹七海 「錆びた滑車」                  

この作家は寡作の人と言ってよく、なかなか新刊が
出ない。だが、一つひとつの作品の質は高く外れが
ない。中でも、女性探偵・葉村晶シリーズは読み応えが
ある。本作品はそのシリーズの最新作だ。

主人公の葉村晶はアラフォーの女性。調布市仙川の
シェアハウスに住んでおり、吉祥寺の古書店で
アルバイトしながら、書店の2階に探偵事務所を
もうけている。だが、めったに依頼主は来ない。

昔勤めていた事務所から仕事の依頼が来た。
年寄りの女性の尾行だ。女性をつけ三鷹台まで
行くが、その女性は訪問したアパートの住民
(こちらも老女だ)ともめアパートの2階から2人は
落下する。そして彼らを見張っていた葉村が
そのはずみでケガをしてしまう。

ここから本来の業務から葉村は外れていく。
アパートの住民の息子と大学生の孫が少し前に
交通事故にあい、息子は死亡、孫も大ケガとなり
リハビリ中ということを知る。

亡くなった息子は沢山の本を残しており、葉村は
本の整理と売却を頼まれる。そしてアパートの
空室に一時的に住むことに・・・。

この辺りまではストーリーの序の口だ。老女の
息子と孫は遊園地に行く途中でアクセルと
ブレーキを踏み間違えた老人の運転により
被害者となるが、この息子と孫が何故遠く
離れた遊園地に行くことになったのか謎だ。

この老女と孫が入院、通院する病院、その
病院長の妻が経営するレストランへと葉村は
足を運ぶ。病院にも複雑な事情がありそうだ。

枝葉の話としてはシェアハウスの同居人の
恋話や、事件捜査の警察関係者らとの絶妙な
やりとり等、楽しませてくれる。

登場人物は少なくないので、表紙裏に書かれて
いる登場人物リストを確かめながら読み進める
ことになる。一人ひとりの人物像を記憶しながら
読んでもらいたい。それぞれのちょっとした
言動が、後から意味を持つことになる。

結論から言うと、大変よくできたミステリーだ。
細部にわたって目が行き届いている。それぞれの
人間の行動に合理性があり無理がない。

終盤はどんでん返しの連続で、頭がくらくら
してくる。

今年読んだ日本のミステリー小説の中では
屈指。年末の週刊文春や「このミス」でベスト10に
ランクされる作品と見た。

ハードカバーにしても十分売れると思うが、
文庫本書下ろしとはうれしい。



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