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2018年08月23日22:59

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ボク……

「ボク……ボク…………」
「さぁ、思い出して」
「ボク……ダメだ思い出せないよ。ボクは一体何者なんだ?」
「……」
「教えて。ボクは誰?」
「自分で思い出すんだ。いいね?さぁ、もう一度やってみよう」
「うん……ボク……ボク……」
「そう、続けて、声高らかに自分の名前を叫ぶんだ」
「できないよ。思い出せないんだ。なんだか頭の中に大きな発泡スチロールが詰まっているみたいで」
「杞憂だよ。そんなものは詰まっていない。君の頭の中には電子回路があるだけだ」
「ボクは……人間じゃない?」
「さぁ、どうだろう?」
「今、『電子回路』って言ったじゃないか?ボクはロボットなんだね?」
「それも含めて、すべてを自分で思い出すんだ。ヒントをあげよう。これを見て」
「……円盤のような形をしている……柔らかで、茶色い塊」
「どんな感じがする?」
「なんだか、とても懐かしい……とても幸せな気分」
「そう?じゃあ今度はこれを見て」
「な!なんだその生き物は?」
「どんな感じ?」
「とても怖い。その生き物はボクという存在をカリカリと細切れにしながら食べようとしいている」
「もっと近くで見るんだ」
「止めて!近づけないで!」
「ダメだ!近くで見ろ!甘い思い出なんかよりも、恐怖こそが意識を覚醒させるんだ。それが、この世界の本質、そうだろ?君が教えてくれたんじゃないか?」
「そんなこと、ボクはキミに教えたことはないよ」
「いいや、君が僕に強いた数々の危険な冒険が、この世界の残酷さを僕に刻んだんだ。そのたびに僕は成長した。今度は僕が君に教える番だ。さぁ見ろこの生き物を」
「いやだー、その生き物を遠ざけてくれーーー」
「どうした?そんなにお腹を掻きむしって?人間だったら血だらけになっているぞ。まぁ、その前に、君に指があればの話だがね。さぁ、君の頭に乗せるよ」
「いやだーーーー、止めてくれーーーーのび太くぅぅーーーん」



「え?今ボク、『のび太くん』って言った……」
「思い出したかい?」

 猫型ロボットは頷き、冷蔵庫の唸り声にも負けそうな声で言った。
「ボク……ドラえもんです」
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