観終わったあとの印象は、観る前に想像していたものとさして変わるものではなかった。もちろんこれは予想通りの秀作だということです。オープニングのシーンからラストカットまで、これぞまごうかたなき是枝印、過去作のエッセンスを盛りこんだような感触もあちこちに。政治色を排したという今回のカンヌ映画祭最高賞にふさわしい一作だと思いました。
前半しばらくのあいだは、社会の底辺で暮らすこの家族の日々を淡々ととらえていく。物音にかき消されてセリフが聞こえなくなったりすることが、全体にただようドキュメンタリータッチに大きく貢献、どちらにしても重苦しい気分が続き、今回の受賞のせいか、この状況を世界中が見つめているのか、そしてこれもまた日本の一断片なりと主張したい気分にかられる。
そしてこの家族、どうも血縁関係が不明瞭、なんとなくお互いに通う空気にぎこちなさがあるなとジワジワ感じてくる。やがてパズルのピースが埋まるようにそれはややボンヤリと明らかになるも、社会の側によって彼らの身にある事が起きてからは、さらにそれぞれの過去があらわになり、それと同時に彼らのあいだもズタズタに引き裂かれてしまう。
終盤は家族それぞれが口にするセリフのひとつひとつが重くそして愛おしい。まるで社会の側(取調官や児童保護担当)がわざとそういう言葉を引きだしているかのよう、前半に連なる重苦しい雰囲気はすべてこの後半のためにあったのかとさえ思えるほど。古今東西の映画作品が提示してきた大きなテーマ「家族っていったいなに?」に新たな問いかけが生まれた気がします。
ログインしてコメントを確認・投稿する