mixiユーザー(id:26940262)

2018年05月30日23:48

106 view

ヒュー・マセケラの足跡を辿って

突然の訃報から4ヶ月あまりが経ち、きしくもこれが追悼盤のようになってしまった、南アフリカ出身の偉大なトランペッターの3枚組アンソロジーです。
タイトル通り、デビューから10年目までの11枚のアルバムからセレクトされた47曲。

1939年、「タウンシップ」と呼ばれる人種隔離区域で生まれた彼は幼少の頃より歌やピアノを覚え、14歳に観たあるアメリカ映画でトランペットの存在を知り、学校でそれを習った彼は地元のバンドに参加する。その仲間の1人が、同じ南アの偉大なピアニストであるダラー・ブランド(アブドゥーラ・イブラヒム)だった。
1960年に南アの黒人として初めてジャズLPをリリースするが、この頃から反アパルトヘイト暴動が頻発。それを嫌った彼は渡米し、ここから本格的なキャリアをスタートさせることになる。
フォト


この3枚組で自分が既に聴いたことがあるのは、3rdアルバムである『The Promise of A Future』だけ。ここからは彼の初期の有名曲である「草原の太陽(Grazing in the Grass)」が生まれている。
https://youtu.be/Tp_S3QOJk90


他に知っているのは、初めて買った彼のベスト盤に収録されていた「Stimela(石炭列車)」。これは劣悪な環境で働かされる出稼ぎ労働者(もちろん黒人)について歌ったもの。
https://youtu.be/NLUJ3WfqB90


彼は南ア政府によって反動分子の烙印を押され、同志のイブラヒムや、歌手のミリアム・マケバと共に帰国を許されなかった。それが解除されるのはネルソン・マンデラが釈放され、アパルトヘイトが撤廃されてからだった。
その間彼は、米国のジャズその他の音楽にも親しみながら、母国の現状を憂いつつ、様々な交流も重ねてアフリカと米国を股にかけるようなワールドワイドな音楽を探求し続けた。南アへの帰国はかなわずとも、ナイジェリアその他のアフリカ諸国へは足を運んでもいた。
その成果というべき、収録されているどの曲にも彼の祈りが込められている。トランペットだけでなく半分近い曲で彼は歌を披露しているのもその現れか。

今から25年前に、今は無き心斎橋のミニシアター「シネマ・ドゥ」で観たドキュメンタリー『アマンドラ!希望の歌』は忘れられない。反アパルトヘイト運動を支えた南アフリカのミュージシャン達。音楽の力。もちろんマセケラも登場する。「Stimela」のライブバージョンは感動的だ。
フォト https://youtu.be/ACEQO6f2O6c
惜しいことに、年代が後だからネルソン・マンデラ釈放を祝福した「Bring Him Back Home」は収録されていないけど。

涙ぐんだような瞳を称えたジャケ写(4枚目のアルバムのもの)が音楽と共にすぅ〜と聴く者の胸に響く。本当に素晴らしいベスト盤です。

彼のパフォーマンスを一目でいいから観たかった。イブラヒムさんは健在なうちに、そのピアノを目の前で聴くことができただけに。
フォト

9 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する