金銭がからむさまざまな問題に直面しながらも、ロンドンの高級アパートメントにひとりで暮らすエミリー(ダイアン・キートン)、そして樹々の谷間の手作りの小屋で自給自足の生活をするドナルド(ブレンダン・グリーソン)、思わぬことから出会ったものの、立場の違うふたりの距離は…。エミリーという女性の存在はともかく、ドナルドの身に起きたことは実話なり。
多少のひねりはあるけれど、だいたい思ったところに着地するロマンティック・コメディ。住宅問題にからむ裁判沙汰に関しても、観る側にさしたる知識を要求せず、ユーモラスに巧く処理してある。ドナルドをもうちょっと破天荒なキャラに設定しているかと思ったが、世間に背を向けているナチュラリストのわりにはけっこう物分かりのいい存在に収束したのは意外だった。
『ロンドン版“アニー・ホール”』と謳われているこの作品、40年以上前の自分をいまさら持ち出されてもと、ことし72歳になるダイアン・キートンは思うかもしれないが、あきらかに“アニー・ホール・ルック“を意識した装いもところどころにあり、どちらにしてもユニークではあるがけっして奇抜ではない彼女のファッションを味わうだけでも十分に楽しい。
原題は“Hampstead“、緑豊かなロンドンの高級住宅地。英国人にはこの地名ひとつだけで物語の背景は十分に伝わりよけいな説明は不要。ロンドンの中心から地下鉄で数駅、15分程度でこれだけ自然に囲まれ、小さな街路さえも美しいエリアに届くのだからやっぱりうらやましく思う。なるほど、人生をはじめるにはこれ以上ふさわしい街はないということです。
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