スポーツライターの二宮氏が江夏に「もし野球の対談本を作るなら相手は誰がいい?」と訊ね、間髪入れず「それなら衣笠しかいない」という答えが返ってきたところからスタートした企画。タイトルはやや大げさ、やはりふたりが交差する昭和50年代前半広島カープでの思い出話が多い。対談日時は内容から推測して昨シーズンの終了後からことしの初めあたり。
ふたりが重なる名場面、「江夏の21球」に関しては、やはりわざわざ1章を割いてふたりの証言をこと細かに重ねてある。この場面のクライマックス、絶体絶命のピンチに古葉監督がリリーフ投手を用意し、それを見たマウンドの江夏がキレ、そして衣笠が共感の言葉をかける…ただ、この場面に関して言えば、指揮官たる古葉監督の気持ちも忖度したくなってくる。
我々は江夏を“無死満塁のピンチを切り抜けた投手”と評価するけど、指揮官としての古葉監督からすれば“無死満塁のピンチに広げてしまった投手”なのだ。衣笠がやや間に立った発言をしていたけど、考えてみれば衣笠・江夏ともその後現場指揮の経験がいっさいなく、仮に一度でもあればこの一件の見方も変わってくるのではなんてことを思った。
他の各章でも、当時のおおらかなプロ野球の様子が味わえて興味深い。まあ記憶の後付け、二宮氏のあおり的な質問の仕方もあってやや脚色された部分があるような気がしないでもない。それでもふたりが発言の最後にときおりポロっと口にする、“(笑)”つきの小ネタが案外当時のリアルな匂いを運んできて楽しかった。あらためて衣笠氏のご冥福をお祈りします。
ログインしてコメントを確認・投稿する