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2018年04月24日14:49

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セメント歴史学 ( 呉座勇一『陰謀の日本中世史』を読む)

と言っても「コンクリートの歴史」を語るわけではありません(笑)
ちょっと個人的な話になります。かつてお付き合いしていたマイミクとのことです。

「かつて」ということは、今はそうではない。
ある女性マイミクを通して、自分と同じくロードバイクに乗られていて音楽が好き、というのがそもそものきっかけで、最初は明るくていい方だな、と楽しく交流していたのが、ほどなくウンザリさせられることに・・・
なぜならその彼、つぶやきで怪しげな「陰謀論」を吹聴し始めたからだ。
いや、ずいぶん以前からその傾向があって、自分は気がつかなかっただけかもしれないが。

彼が得意げに(しかも真剣に)言われることは「おきまりの」ユダヤやフリーメーソンの黒幕論。ずいぶん不快な思いでいても、それくらいなら一笑に付しても構わない。ところが、かの東日本大震災は、海底掘削船「ちきゅう」が引き起こしたものだ!などと言うに至って、これは聞き捨てがならないと、根拠となる記事URLを貼って反論したら、そんなことはないですよ!!と、先方も記事URL付きで(笑)語気もあらげに猛然と再反論。
この時はいったんはほとぼりを冷まし、折り合いをつけながらお付き合いは続きましたが、とうとう耐えかねてマイミク解消。
ついでに言えば彼、れきとした二児の父である(笑) ご婦人マイミク方に媚を売るような態度も見ていて嫌だった。
静岡の方なので、4年前の富士山一周サイクリングの帰りにお会いしようと考えたけど、止してほんとうに良かった(笑)
ちなみに、仲立ち(?)された女性も退会されてしまった。鬱の気でメンタルがダウンしてとてもお気の毒だったけども、こればかりはしょうがない。

陰謀論を信奉される方は本当に多い。今も他のマイミクさんに何人かおられるみたいだ。件のいきさつに懲りてほとんどシカトしてるけども(笑)
それをとやかく語るのも自分の手に余るものがあるのですが、このほど読了した『陰謀の日本中世史』は、そうした風潮に一石を投じる注目すべき一冊だと思う。
著者は、先に出された『応仁の乱』が驚きのベストセラーとなった歴史学者の呉座勇一氏。

タイトルからして、中世史は陰謀まみれだ、と誤解されかねないけど実は逆で、保元の乱から関ヶ原の役まで、歴史好きから学会まで論議がかまびすしい陰謀についての通説奇説を、著者の倫理的かつ常識的な思考で精査/検証するのが本書の主旨。

自分としては・・・、いや、誰が読んでも同じ印象かもしれませんが、鎌倉時代はきわめてややこしくてわかりにくい。ここはざざっと読んでおくとして(笑)、やっぱり興味ががぜん沸いてくるのは応仁の乱の「日野富子悪女説」、本能寺の変の様々な陰謀説。関ヶ原の家康が全て仕組んだ説。
呉座氏はそれに対して、整然と問題点を提示し反駁していく。論者その人に対しての批判も厭わない。

呉座氏は言う。今まで陰謀論が大手を振ってまかり通るのは、駁すべき歴史の専門家(研究者)達が「時間の無駄だ」と黙殺していたからだ。だから、誰かが猫の首に鈴をつけねばならない。と。
陰謀論を「トンデモ説」と笑ってスルーせず、歴史学の土俵に引き上げてガチンコで判定してやろうじゃないか!という気概、切れ味のいい思考力に胸の空く思い。そして、それらを解析するのもまた歴史学の醍醐味。というのをあらためて考えさせられたのです。
(タイトルの「セメント」とはプロレスにおける申し合わせ無しの真剣勝負。「シュート」とも言うが、元々はガチンコ同様、相撲が起源とのこと)

フォト
レビュー評価は★★★★

呉座氏が述べる陰謀論の特徴。
「事件によって最大の利益を得たものが真犯人である」という法則を信奉する。
「特定の個人、集団の筋書き通りに状況をコントロールする」という思い込み。
「結果から逆算して推理する」結果論。
「加害者(攻撃側)と被害者(防御側)の立場が実際には逆である可能性」にこだわる。

ではなぜ陰謀論が流行るのか?
それはまず「わかりやすい」。本書においては応仁の乱が最もで、本当は大名同士の勢力争いなのに、それがややこしいと日野富子を悪者に仕立てた。
自分だけが知っている。バカな俗世間はわかるまい。といういびつな優越感。既成の政治/社会に対する(低レベルな)不信感もそこにあるかもしれない。
「新事実発見!」というセンセーショナリズム。

その某元マイミクもそうだけど、自分に都合のいい「証拠」だけ取り込もうとする牽強付会もそうだろう。反証にも真っ直ぐ目を通すのが本来の研究であるはずなのに。
要するに、歴史がドラマみたいなものだと勘違いしているのだ。実は地味な絡みと積み重ねに偶然が加えられたものに過ぎない。自分も政治史的な本をいくつも読んだけど、おしなべてややこしくて退屈なものですよ(笑) 身も蓋もないけどそういうものですね

フォト 呉座氏が語る「フェイクニュース防衛術」
https://dot.asahi.com/aera/2018041200055.html

『応仁の乱』
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=4080359
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