主演のダイアン・クルーガー。彼女の渾身の演技!この映画の魅力はまずそこに尽きるでしょう。
恥ずかしながら自分、彼女のことは「なんとなく知っている女優」でしかなかった。
モデル出身で、出演作をあらためて調べてみても、案の定というかヴィジュアル/セクシー系の役柄が多いような感じ。それがこの迫真的な力演である。
しかも、彼女はドイツ人でありながら、今までドイツ語映画には出たことがなかったという。
それだけ国際的な女優ではあるのだろうけど、ドイツ映画よ、今まで何してたの!?と言いたくもなるが(笑)
そんな彼女をあえて起用したのは、トルコ系ドイツ人で、自分も昔から大好きなファティ・アキン監督。
彼はデビュー当時から、越境する愛と死、というのを力強く描き続けてきた。
この映画もその系譜になるのだろうけど、そこに今度は「復讐系」の社会派犯罪サスペンスという展開を盛り込んでいる新機軸。
〈あらすじ〉ドイツ、ハンブルグ。トルコ移民(正確にはクルド人)のヌーリと獄中結婚したカティヤは出所後に幸せな家庭を築いていたが、ある日、白昼起こった爆発事件に巻き込まれ、ヌーリと息子のロッコが犠牲になってしまう。警察は当初、トルコ人同士の抗争を疑っていたが、やがて人種差別主義者のドイツ人によるテロであることが判明。愛する家族を奪われたカティヤは、憎しみと絶望を抱えてさまようが……。
これは実際にあった、極右グループによる人種差別テロ事件を基にしている。その捜査や裁判においても、被害に遭ったトルコ系住民に対する偏見が大きく寄与し、解決に至るまで混迷した。後にメルケル首相も謝罪したという。
だからこの映画においてもアキン監督が言わんとしているのは明らか。公判シーンにおいても白黒がはっきりしているじゃないか、と観客である自分は思ってはいても、カティヤ夫婦に前科があり、弁護側の巧みな戦略もあって・・・。(これ以上はネタバレなので省略。)
カティヤは、前歴といい決して品行方正な女性とは言い難い。ちょっと「汚れ」が入っている、だけど妻として母としては懸命に生きる女性だ。だからこそ喪った悲しみは底知れない。あらゆる感情がほとばしる集中力に溢れたダイアンの演技。繰り返し言いますが、本当に素晴らしい。
終盤において、彼女が取ろうとした行動。その選択と決断(邦題の意味がここで強烈に解る)、衝撃的なラストシーン。
これは観る人によって評価が別れるところだろう。
「赦し」はキレイゴトに過ぎないのか?それでは復讐を肯定するのか? 正義の行方と、手を下す覚悟とは。。。
ぜひご覧になって考えて頂きたい映画です。
【予告編】
https://youtu.be/Q64exc5AR4c
〈 シネリーブル梅田、シネマート心斎橋で公開中 〉
音楽を担当したのは「クイーンズ・オブ・ストーン・エイジ」なるグループのリーダー、ジョシュ・オム。自分はぜんぜん知らないバンドだったのだけど、あらためて聴いてみれば、ポストパンク、オルタナ系の、疾走感とねじれたアレンジがユニークで面白い。彼ら実は、グラミーの最優秀アルバム賞候補にもなっていたのか。彼らを起用するアキン監督も感性が若いなあ〜!
https://youtu.be/XgLcnfp9s_M
『消えた声が、その名を呼ぶ』(16年)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1949626416&owner_id=26940262
『50年後のボクたちは』(17年)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1962711382&owner_id=26940262
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