mixiユーザー(id:26940262)

2018年04月02日20:01

411 view

3月の1本と1冊

カチンコ 『ハッピーエンド』(シネリーブル梅田)

本 『わたしの名前は、ルーシー・バートン』フォト
エリザベス・ストラウト http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965503120&owner_id=26940262

やっぱり、ミヒャエル・ハネケですよ!『愛、アムール』でヒューマ二ティ溢れるところを見せて、あ、この人も丸くなったな、と思いきや、その振れ幅を戻すように、不穏かつ不愉快な作風が帰ってきた。その厳然で怜悧な眼差しは、やっぱり終生変わることのない持ち味なのだろうか。

建設関係とおぼしき会社を営む、あるブルジョワ系の家族。それぞれの秘めたる心の闇が、張り詰めた空気の中で渦を巻き、観る者に静かな圧力となってのしかかる。その息苦しさがたまらない(笑)
フォト フォト
フォト フォト
ハネケ監督はこの映画で何を語ろうとしたのか?家族という厄介な「近しい他人の集まり」の孤立をリアルな寓話として描こうとしたのか。同じ月にみた『皆殺しの天使』と同じく、ブルジョアジーの虚飾に冷笑を浴びせているのか? 移民問題にも絡んでいるという批評もありはするけど、とどのつまり、彼らが実は「家庭難民」にも思えてきはしまいか。
そして冒頭をはじめ、SNSやパソコン上で羅列される言葉(と映像)。その寒々しい空虚さ。現代社会の象徴であるそれらの風刺にも及んでいるのも、彼の冴えが衰えていない現れでしょう。
明らかに反語なタイトルの、なんとアイロニカルなことか。
フォト【予告編】https://youtu.be/OIz9cEKYma8

『花咲くころ』は2013年のグルジア(ジョージア)映画。日本初公開。
物語は1992年ごろ。周辺地域に紛争が起こり、内戦の傷跡も残るジョージアの首都トビリシ。そこで暮らすふたりの少女、ナティアとエカ。ふたりは親友同士。
フォト
ふたりが通う学校も機能しているし、日常生活も営めているように見えて、食糧難や停電はまだ改善されていない。もちろん経済的にも苦しい毎日。そのせいなのだろう、大人たちはどことなくギスギスしている。それは町の表情だけでなく、ふたりの家庭にも及んでいる。
その中でも、ふたりがじゃれ合うように生意気でやんちゃな毎日を送るのは、どこの国の少女時代と変わらないように見えるが、ある日ナティアが誘拐婚に遭ってしまう…
これはコーカサス地方の悪習らしい。かなり衝撃的。
ナティアとエカのこれからはどうなるのだろう? しかし、どんな困難があっても彼女たちは逞しく生きるだろう。それを予感させながら映画は終わる。
共同監督のひとりは、ジョージア人女性のナナ・エクフティミシュビリ。彼女の願いが投影されている。
フォト
くっきりとしたトーンの映像による、生々しさの中の詩情が素晴らしい。ジョージアは実は優れた映画を昔から生み出してきた。自分も5本以上観ただろうか。この映画もその伝統を感じさせられもするのです。
こっちのオリジナルタイトルは『長く明るい日々』。これもまた意味深だ。
【予告編】https://youtu.be/rbW5f_sPMLo

今季から映画は、本と同じく、観た順ではなく「良かった順」に列記させて頂きます。

フォト『聖なる鹿殺し』(シネリーブル梅田)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965609602&owner_id=26940262

フォト『15時17分、パリ行き』(TOHOシネマズなんば)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965417963&owner_id=26940262

フォト『花咲くころ』(テアトル梅田)

フォト『苦い銭』(第七藝術劇場)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965461731&owner_id=26940262

フォト『皆殺しの天使』(シネ・ヌーヴォ)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965625597&owner_id=26940262

フォト『素敵なダイナマイトスキャンダル』
(なんばパークスシネマ)http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965859770&owner_id=26940262

フォト『長江 愛の詩』(シネマート心斎橋)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965532366&owner_id=26940262

フォト『わたしたちの家』(第七藝術劇場)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965750196&owner_id=26940262

フォト『サラバ静寂』(第七藝術劇場)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965736384&owner_id=26940262

フォト『神様の轍』(第七藝術劇場)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965761004&owner_id=26940262


『読書で離婚を考えた』円城塔/田辺青蛙
作家夫婦であるふたりの「交換読書」エッセイ。互いに課題図書を出し合って感想を述べるというもの。お題の本は小説に限らない。料理関係だったり、実用書だったら、ノンフィクションだったりする。
円城氏はSF作家で、奥方である田辺氏は怪奇作家。似て非なる作風のふたり、読む本において全く共通するところが無いばかりか、性格も正反対。理詰めで考える円城氏に対して田辺氏はかなりアバウト。それが互いの生活習慣にも現れている。
こんな「食い違い夫婦」もあるのか?いや、案外多いでしょう。ただ、ふたりは互いの趣向思考について干渉しない。尊重しているような(?)距離を置いて生活している。
しかしこのままではいかん。そこでこの企画をきっかけに夫婦の相互理解を、と目論んではみたが、続けるほどにふたりの差異が明らかに・・・。これが本当に可笑しい。
特に料理。いちおう家庭生活を営んでいるからお互い作れるのだけど、レシピ通りにきっちり作る円城氏に比べ、田辺氏は下手じゃないのだけど、余計な手を加えてしまって「一期一会の味」になってしまうというのに吹き出してしまった。
お互いが提示する課題図書は、言わば相手に対してのメッセージであり問いかけだ。それに対して、正直に打ち明けたり、作家目線で核心に富んだ意見があったり、時にはたわいも無くはぐらかしたり(笑) 本当に面白い本でした。
フォト フォト
しかし、自分はおふたりの作品は一冊も読んでいない(^^;

フォト『台所のおと』幸田文
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965643247&owner_id=26940262

『実録、テレビ時代劇史』能村庸一
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=2862774

『西郷の首』伊東潤
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=4376855

『スイカの種はなぜ散らばっているのか。タネたちのすごい戦略』稲垣栄洋
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=4290315

『諜報の天才 杉原千畝』白石仁章
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=1508508

『サイエンス異人伝』荒俣宏
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=3698473

『お殿様、外交官になる』熊田忠雄
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=4439971

『ウルトラマンが泣いている、円谷プロの失敗』円谷英明
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=2571049

13 10

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年04月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930