mixiユーザー(id:26940262)

2018年01月31日22:59

234 view

救ったのはどっち? ( 映画『はじめてのおもてなし』)

カウリスマキの『希望のかなた』と同じく、この映画もヨーロッパでの難民問題をを題材にした映画。と、思いきや、実はコメディだった。
だけどこれが予想以上の快作!

はるばるドイツまで、ナイジェリアの「ボコハラム」による迫害を逃れてきた青年ディアロ。
彼を身元引き受け人のように迎えるドイツ人家族達との交流を描いた物語なのだけど、これがまた毒気とユーモアたっぷりにドイツ社会を風刺しているのだ。

なぜならホストファミリーであるハートマン家。裕福な暮らしをしていながら、内実は冷え切っているのだ。
主人であるリヒャルトは寄る年波を気にしていてアンチエイジングに汲々としている。
息子のフィリップは、強迫観念に取り憑かれたように仕事に追われる毎日。息子がいるが構っている暇はないので、その息子も子どもらしさを失ってしまっている。
娘のゾフィは30歳を過ぎても自分の進路を決められないまま、大学を卒業できず、父親に叱責されてばかり。
そして妻のアンゲリカは、夫にも子どもにも構ってもらえず、どこか虚しい心を抱え、気がつけばワインボトルが離せなくなっている。そもそもディアロを受け入れる発案をしたのが彼女なのだ。それがどうしてなのかは、お察し頂けるでしょう。
そこに更に隙間風を漂わせるのが西欧流の「個人主義」。家族といえど「わたしはわたし。あなたはあなた。」
家族が、かけがえのない財産であるのが当たり前のように生きてきたディアロは戸惑うばかり。
フォト フォト

なんてことはない。家族を失った可哀想な難民であるディアロを迎えたハートマン家みんなが孤独だった。なんというアイロニーか。だけどそれは、欧米も 我々にも「こういう家族あるよね」的なリアリティに満ちている。

しかも内外でよく言われる、ドイツ人らしい「率直過ぎる」、見ようによっては「攻撃的な」国民性が事を荒立てていく。
フォト フォト
リヒャルトの友人である美容整形医が高須某さんみたいに胡散臭いし(笑)、アンゲリカの友人で難民支援事業に勤しむテンションの高い左翼的な女性。キリスト教原理主義者らしい隣の奥さん。ゾフィのストーカーはネオナチのシンパ。みんな「居そうな」キャラだ。
ディアロはふと漏らす。「ドイツ人は変だ」

それらがドヤドヤと波風を立てながら、肝心の難民問題にも軽いなりなりにもちゃんと向き合って(「ボコハラム」の意味が現地語で「教育は罪」というのをこの映画で初めて知った。)、晴れやかな結末へと着地していく展開は見事です。
もちろん、笑いもふんだんに散りばめている。それがドイツ映画にしては珍しく(笑)我々にもちゃんと通じているのがいい。館内、何度笑い声に沸いたことやら。これは本当に脚本の良さだ。
フォト


本国ドイツでは大ヒットしたのもなるほどと思った。

フォト【予告編】https://youtu.be/tmklOzR8LgI

〈 シネリーブル梅田で上映中 〉










15 16

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する