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2018年01月20日21:53

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煌めきに揺れる心 ( 映画『汚れたダイアモンド』)

よく出来たノワール(犯罪)映画です。
しかし、決して派手なアクションや、手の込んだ伏線や、映像やBGMのセンスがいいとか、作り手が才気を「ひけらかす」感がほとんど無い。むしろそれをあえて抑え、ストーリーだけで勝負!といった骨太さ、潔さがある。

それが職人的なベテラン監督が手がけたのならまだしも、アルチュール・アラリなる人は撮影時が35歳の若さで、しかもこれが処女長編!
習作と割り切って余計な仕掛けを手控えているのか。それとも映画を相当勉強したことでキャリアを思わせないくらい成熟しているなら、これは凄いことだ。
「レオス・カラックス以来の衝撃と言われる、フランスの新たな才能の誕生!」という触れ込みは大げさじゃないの?と観終わった直後は肩透かしな感があったけど、後々思い出すほどに「観ごたえ」が湧いてくる。やっぱりこれは新人離れしていると思った。

主人公のピエールは、強盗の手先となって生きている身。
ある日15歳から音信不通だった父が死んだことを突然知らされる。アントワープのダイヤモンド商家生まれの父は、ダイヤの研磨作業中に不慮の事故で手先を失い、その後精神を病み、家族の前からも姿を消し、野垂れ死んだのだ。それを知らされたピエールは、生家から追放された父の過去とみじめな最期に、父の兄ジョゼフを長とする一族への復讐と、ダイヤの強盗を誓う。
彼は住んでいたパリから、ベルギーのアントワープへ向かう。父に死なれ、身寄りのない甥の振りをしてジョゼフ一家を頼るように身を寄せる。もちろん内部から復讐を企てるための準備期間だ。

しかし、人間の情の不思議さはここからだ。まず、憎っくき目標のジョゼフ一家に次第に心を寄せるようになってしまう。
そして見習い職人としてダイヤカットの工房に入り(もちろんそれも偵察が目的)、腕利き職人のリックから親身に教えてもらううちにダイヤモンドの魅力に引き込まれていく。
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復讐する計画が進行していく中で揺れ動くピエールの心。それがじっくりじっくりと緩やかに描かれているのが、この映画の妙味と言えるでしょう。結末がどうなるかの不透明さも観る者の気持ちを引きつけて離さない。更に、意外なラストシーンも。

なによりも、原石をカッティングすることで輝き、すなわち「見え方」が違ってくる。というダイヤモンドの存在そのものがメタファーになっている、というのも新人らしからぬ心憎さ。そしてそこには隠された真実も秘められて・・・

フォト【予告編】https://youtu.be/bPQFbHj5Jc0

〈 テアトル梅田で公開中 】

アラリ監督の次回作は、なんとあの小野田寛郎さんがモデルだとか!これは楽しみでしょうがない。

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