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2017年12月26日09:32

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☆洋ちゃんアの読観聴 No. 1244

☆洋ちゃんアの読観聴 No. 1244                

遠田潤子 「雪の鉄樹」                     

この作家の名前は知っていたが、作品を手に取る
のは初めて。

2009年にデビュー、その後ほぼ1年に1作ペースで
作品を出している。 

作風はと言うと、1作読んだだけの印象なので
正しいかどうか分からないが、桐野夏生あるいは
吉田修一に近いかもしれない。つまり、根っからの
悪人でない普通の人間が悪や罪に染まってしまう
ということだ。

主人公は庭師の雅雪。祖父も父も庭師で彼は
3代目だ。ところが祖父と父は近所でも有名な
女たらし。雅雪も彼らのようにならないかと自ら
心配する。

ところで雅雪は20歳の頃から13年間も両親の
いない少年、遼平の面倒を見続けている。
父親のように兄のように。それは何故なのか? 
これが作品の中盤になってもなかなか明かされない。

次第に、13年前に雅雪らが庭の手入れをしていた
一家で事件が起こったことが分かって来る。

その一方で、雅雪の生い立ちも分かってくる。
とにかく女たらしの家に育っているから、実の
母親はとっくに家を出ており、家では常にどこかの
女がいる。つまり彼は、身の回りの世話をする
人がいないまま一人で生きてきたのだ。なので
社会の常識を彼は知らない。

この彼のキャラと、彼が付き合う友人、恋人との
やりとりが作品の核となっている。さらに(ネタバレ
なので書けないが)雅雪と遼平との微妙な関係
にも関わってくる。

非常に重いテーマである。すごい愛憎劇だ。
壮絶な小説だ。

多くの書評家が、近い将来に遠田潤子は
直木賞を受賞するだろうと言う。納得した。

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