独特の妖しい美学〜まずは一連のデヴィッド・リンチ作品を思いうかべたんだけどどうだろう。監督は世界的ファッションデザイナーのトム・フォード。度肝を抜かれたオープニングシーンは、いかにもクリエイターが「一度やってみたかったからやってみた」と独りごちたあげくのような、深読みをも拒否する醜悪なるアートとでも言えばいいだろうか。
アートギャラリーのオーナーとして成功しているスーザン(エイミー・アダムス)のもとに、「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」と題された小説の原稿が送られてくる。それは20年前に分かれた元夫、エドワード(ジェイク・ギレンホール)によって書かれたもの。現夫とのあいだがうまくいかないスーザンは、ひとり寝のベッドのうえでページをめくりはじめる…。
暴力的な小説の内容が劇中劇として、そしてその謎めいた物語を読む現実のスーザン、さらにふたりが出会った20年前の回想シーン。この3つが並行して描かれていき、その思わせぶりたっぷりのスタイリッシュな映像やさりげない小道具をまぶした演出の数々に惑わされ、観ている側はその境目がだんだんとおぼつかなくスパイラルな状態になっていく。
ラストには置いてきぼり感を味わうひともいるかもしれない。ただ、スーザンの心情にそって物語を追っていくと、この作品を深く味わえると思う。映画の感想としては失格だけど、先日の高速道路での危険運転、猟奇的連続殺人、そして米国での銃乱射、おぞましい事件が続いたあとに観たのは、ちょっとタイミングが悪かったかなという思いも残った作品だった。
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