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2017年11月01日23:38

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第69回「正倉院展」

朝、奈良県庁に出向中の配偶者が出勤するのと一緒に、6時56分発の電車に乗車。
なんば駅で近鉄の快速急行に乗り換え、8時10分ごろ奈良駅に到着。

そこから奈良国立博物館まで歩いていけば、8時半前に到着・・なのだが。

すでに博物館の入り口にはざっと100人近くの行列が(^^;
そう、「正倉院展」は毎年、こんな感じです。
9時の開館まで辛抱強く待っていると、後ろに並んでいる女性が
「おっちゃん、おばちゃんばっかりやなあ」と。いえ、アナタもおばちゃんなんですけど(笑)。確かに入場者は平均年齢はかなり高め。

ようやく開館時間になり中に入るともうすでに混雑。
しかし宝物が、壁に沿ったガラスケースと、展示室の真ん中に並ぶケースとゆったり目に陳列しているので、ところどころ観客がバラけてくるスキマに顔を伸ばしてのぞき込む。

今回の目玉出展の「羊木臈纈屛風(ひつじきろうけちのびょうぶ)」。
羊のくるくるっと巻いた角が特徴的だ。
日本で羊が家畜として飼育されるようになったのは明治以降。
それ以前、まったく羊という動物が日本にいなかったわけではなく、日本書紀には、推古天皇に百済から羊が朝貢された、という記述もあるのだが、基本的に日本には生息しておらず、「舶来の珍獣」だったはず。
(ろうけつ染め、って昭和40年代ごろ流行っていたような記憶があるんだが。亡き母がろうけつ染めのハンドバッグを持っていたのを覚えている)。

今回の「正倉院展」のポスターやチラシに使われているのが、エメラルドグリーンがなんともあざやかで印象的な「瑠璃十二曲長坏(みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)」。側面にはウサギやチューリップが刻まれているとのことなので、目を凝らしてなんとかその象(かたち)を認めることができた。
写真だと、側面から写しているので丸いお皿のようにも見えるけど、楕円のちょっと細長くなっている容器です。
チューリップって、当時の日本人は見たことがなかったんじゃないかと思うが、これも異国情緒アイテムとして好まれたのか。
ペルシア起源のものを中国で写して制作されたらしい。

迦楼羅(かるら)の伎楽面、経典を包むための最勝王経帙(さいしょうおうきょうのちつ)に織り込まれた迦陵頻伽(かりょうびんが)は、インドに起源をもつキャラクターだ。
(※迦陵頻伽は、上半身が人で、下半身が鳥の仏教における想像上の生物)。

昨年も正倉院展を見に行ったときに日記に書いたのだが、聖武天皇のお気に入りグッズの数々ってどれもこれもキーワードは「異国趣味」。
はるばる西域から運ばれた舶来品も多いし、また国産品も、中国や西域の製品をお手本にデザインされ制作している。

よく「右派」のひとが「日本のこころを大切にしよう」とか「日本の伝統と文化を守れ」とか言うんだけど、あれって、いつのことを彼らは言ってるんだろう。
西域からインド、中国、朝鮮半島と伝わってきた文物なしで、いまの日本文化はありえないと思うのだが。

わたしは「葡萄唐草文」が好きだ。
21世紀の今でもおしゃれな文様だと思うし、植物をあしらうセンスのよさは、これもわたしの好きなウィリアム・モリスを思わせるところがある。
アッシリア起源なのだというが、三千年近くものあいだ受け継がれ、中国や日本では銅鏡の背面や織物でそれを見ることができる。
今回の出陳でも、赤紫いろの帯に葡萄唐草文が織り込まれているのを見ると、自分が遠い遠い旅をしてきたような気持になる。
アッシリアから続く長い旅だ。

千数百年も前、はるかアジアの涯てまで、文物を運んできたひとたちがいた。
先進地たるアジアの大陸へ、それを学ばんと、命がけの航海をしたわれわれのご先祖がいた。
それにひきかえ、昨今のわたしは「遠出はもうきつい。近場の温泉に行くのが一番」なぞ口走る始末。ああ、パスポートなんかずっと昔に失効したっきりだ。更新するのもめんどうだし・・・パスポートなんかなかった太古のほうが、人々は軽やかに、大洋を超えていったのかも知れぬが。

展示の後半は、戸籍や正税帳(決算報告書)といった公文書や、写経などの文書。
この当時の紙は貴重品だから、つぎはぎだらけの文書も多い。
勝手に物品を持ち出したことに関する「始末書」まで展示されてあって、この人、まさか1300年もあとの人間に読まれてるなんて思ってなかったろうなあ。
わたしも福岡のOL時代、一度だけひどいミスをやらかして始末書を書いたことがある。
だもんで、みょうに親近感を覚えたのだが、こういった普遍性のある文書が毎回出陳されるのも、正倉院展の面白さか。

宝物は60数点しか展示がないにもかかわらず、混雑もあり、見終わってグッズ売り場で友人と大学の恩師にお土産を買って博物館の外に出ると、もう11時近かった。
お昼は、配偶者と県庁で待ち合わせて、駅前の商店街のお店へ。
路地を入った先にある、観光客はあまり来ない、小さな店なのだが、安くておいしい定食が出る。
豆乳とクリームチーズでつくったという「チーズ豆腐」が美味このうえない。
つい、お店の人に作り方を聞いてしまう。
(10月31日、奈良国立博物館)
※画像は左から「羊木臈纈屛風(ひつじきろうけちのびょうぶ)」、
「瑠璃十二曲長坏(みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)」、
迦楼羅(かるら)の伎楽面 
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