たぶん松竹はこの人情喜劇を寅さんや釣りバカに匹敵するシリーズものに育てたいと思っているのだろう。ただ、平田家のみなさんはとらや(くるまや)一家やハマちゃんちよりもずっといい暮らしをしている。今後あまり生活ぶりが上向くとは思えない、この国の大衆に末永く支持されるためには、そこのところでやがて限界がくるのでは…などと言うのは大きなお世話だろうか。
オール松竹による総力戦。脇役に中村鷹之資(歌舞伎役者〜富十郎の長男)や藤山扇治郎(新喜劇〜寛美の孫)が配され、笑福亭鶴瓶(松竹芸能)までがチョイ役で登場。そしてドタバタをくりかえす平田家では唯一マトモなふたり、庄太と憲子(妻夫木聡・蒼井優)がツーショットになるシーンでは、昭和の古き松竹映画を思わせるクラシックな色調がスクリーンに漂うのだ。
とりわけ蒼井優が演じる憲子は「いまどきこんな子おらんやろ」といいたくなる昭和の良家子女のたたずまいと言葉づかい。九州から上京し看護士として働いている平成21世紀女子のものとはとても思えず(彼女の母親とその暮らしぶりもちらっと顔を出すが、とてもハイソとは…)、このあたりは山田洋次ならではの、昭和の美しき女性像に思いをはせた確信犯的演出だろう。
前回で平田家各々の人物描写は済ませたということで、今回は家長・周造(橋爪功)の運転免許返上問題と下流独居老人(小林稔侍)の行く末、このふたつに物語は絞られる。ただけっしてめでたしめでたしではなく意外にもビターなエンディング。とはいえ高齢者がほとんどを占めていた劇場内は終始笑いの渦、続編へのひきつけかたも実にソツのないものだった。
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