昨年のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞したケン・ローチ監督作品。妻を亡くし心臓に疾患のあるダニエル59歳は、大工の職を止めろと医師に勧められる。休職中は国の援助を受けようとするがお役所の複雑なシステムのせいで思うようにならない。やがて同じような境遇のシングルマザー・ケイティそして彼女が連れるふたりの子供と出会い…。
舞台となっているのはイングランド北東部の街ニューカッスル。まるでドキュメンタリーを見るかのようなカメラワーク、ごくごく自然な会話のやりとり、リアリティこそがこの作品の生命線。どこかキップのいい江戸っ子親父を思わせる、ダニエル役デイヴ・ジョーンズは映画初出演のコメディアン、そしてケイティ役の女優も新人、この配置も物語にリアリティをもたらしている。
手続きがあまりにも複雑なため役所とのやりとりは実にやっかい、実際のシステムをそのまま物語に反映させて、イラつく気持ちを共感できるような演出は見事。しかし完全に悪者として描かれている英国あるいはニューカッスルの行政は、この映画製作者に何も言ってこないのだろうか。日本の映画だったらとてもここまでリアルに描けないと思う。
そうとは言え、ダニエルの置かれた立場、それはやがてわが身の問題にもなりえると、そしてこの日本という国においてはこれらの問題ははたしてどうなっているのだろうかと、観る側は誰しも考えることになると思う。社会保障に関しては日本よりずっと先進国だと聞かされ続けてきた英国のビターな物語だからこそ、なおさらその思いはつのるのだ。
ログインしてコメントを確認・投稿する