荻上直子監督(「かもめ食堂」「めがね」)によるオリジナル脚本。女性への適合手術を受けたトランスジェンダーのリンコ(生田斗真)、そして共に暮らす恋人マキオ(桐谷健太)。彼らのもとにマキオの姪っこ小学生女子トモ(柿原りんか)がころがりこんでくる。三人での奇妙な共同生活が始まるが、世間の目はけっして温かいものではなく…。
トモの目を通したリンコのありかたがこの作品の視点かなとイージーに思ったのは最初のうち、けっしてそれだけにあらず、セクシャルマイノリティをはじめ格差社会・いじめ・育児放棄・認知症…さまざまな問題をはらみつつ物語は季節を重ねていく。満開の桜の川べり、緑あふれる池の端、夕日の沈む浜辺、三人ですごす時間の幸福感…素晴らしい演出が続く。
先入観と言われてもしかたないけど、イヤな女性を描くのはやっぱり女性監督のほうがリアルだなと感じたり、連発される下ネタには案外抵抗ないんだなと思ったり。そしてこの作品は昨年亡くなったりりィの遺作でもあり。施設にて認知症と闘う母親の役、わらべ歌を唄うシーンがあるのだけど、これが最期の歌声になったかと思うと…。
ピアノの響き以外の音はほぼ抑えられ、ゆったりした静かな時間のなかセリフのやりとりがじっくりと続く。これは登場人物が抱える問題に関わる言葉のひとつひとつを、観る側がかみしめて味わえるように組み立てられたものに違いない。母と娘のありかたを浮き彫りにしたラスト十数分は涙腺が緩みっぱなし、まちがいなくことしの邦画を代表する作品のひとつになると思います。
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