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2016年11月04日19:42

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秋の夜長はフランク永井のジャズで。「オール・オブ・ミー」などはいかがだろうか

 夕方になるともう暗い。逢魔時というと夕暮れに怖いものが出そうな雰囲気をよく表現しているが、昼から夜に移るこのときを黄昏時ともいう。こちらは、人生のたそがれを思い浮かべもするが、たそがれということばが、ちょっとセンチな感情がでていて夢や想い出をふくらます。それが秋だ。
 秋は夜の長さを感じさせる。このときに、静かにジャズを聴くのがいい。静かではないのもあるのだが、ジャズがいい。ということで、フランク永井が歌い残したCDやテープを引っ張り出して、ちょびちょびやりながら聴く。
 「オール・オブ・ミー」は大好きである。気持ちの乗せ方がいい。
 同名のLPがある。1981:SJX-30051「オール・オブ・ミー〜フランク永井スタンダードを歌う〜」という盤。フランク永井のお気に入りだけを厳選しただけに、どの曲を聴いてもここちよい。以前に別項でも記したが、音楽のハイレゾ化が裏で準備されていた時期に、真っ先に研究、実験の対象に選ばれたのがフランク永井のこの盤の音源だ。
 1984:SJX-30239「ANSWER ME MY LOVE〜フランク永井ワルツをあなたに〜」もいい。これはワルツだ。シャンソン、タンゴまでジャズとひとくくりで呼んだ洋楽は、当然だが全部カバーだ。欧米で人気を博した曲であるゆえに、スタンダードといわれる。
 フランク永井はクロスビーらが歌うジャズに入れ込んだときから、歌手への道が開かれた。多くの大歌手がそうであるように、歌のうまい歌手はそうじて耳がいい。音感がいいだけでなく、聴いただけで優れた歌い手の微妙、絶妙な表現のきびをつかむ。自分で歌ってみて、自分の声、歌い方の中に、己だけのユニークな勘所を知る。
 フランク永井が津田英語学校に通い、英語を理解し発生を身に付け、本格さをどこまでも追及していく。後に恩師吉田正のすすめで流行歌に転向はするが、洋楽についての入れ込みは本気だった。米軍キャンプで歌い、キャンプ・ドレイク(朝霞)では正式にお抱えにまでなっている。そのような時代に、リクエストに応えていくつも歌うことになる。
 そうした時代に思い入れがひときわ深かった曲を「オール・オブ・ミー」盤に注いだのだ。ジョージ川口ら当時のトップ演奏家と夢のユニットを組んだのだから、フランク永井自身も胸が躍る。そのようにしてできたLPである。
 いずれの盤も同時にカセットでも発売されている。「ANSWER ME MY LOVE」のカセット版には、珍しくフランク永井自身のことばが添えてある。その貴重な資料を下記に紹介したい。

 私とワルツというのは、溝からぬ因縁がありまして、初めて人前で歌ったのがラジオのノド自慢で、ワルツの“My Baby's Coming Home”。その後、米軍キャンプのクラブで歌うようになり、気がつくとレパートリーの大半がワルツという有様でした。詞やメロディーの美しさに魅せられてのことですが、仲間からは別名「ワルツ永井」と呼ばれるほどでした。
 このアルバムは、その頃の、つまり1950年前後に流行った曲目を、というのが当初の目論見でしたが、もっと古いものが4曲入りました。私のクラブ歌手時代に好んで歌ったもので、“I Wonder Wrufs Kissing Her Now”“Ramona”“Let Me Call You Sweetheart”“It's A SinTo Tell A Lie”がそれです。いずれも1940年以前の曲です当時これらの曲のレッスンに、さほどの苦労を覚えなかったのは、多分、耳に馴染んでいた歌だったからかもしれません。
 それは歌謡曲についてもいえることで、私の生まれる前の昭和4年頃に流行したという“君恋し”を、同36年にリバイバルしたときも、遠い記憶の底から引っぼり出して歌うといった趣で、あれほどスムーズなレコーディングはありませんでした。世の東西を問わず、このへんがスタンダード・ナンバーのナンバーたるところなのでしょうか。
 永い間あたためていたワルツ特集の企画をもちかけ、ディレクターが即座にOKしてくれたのは嬉しかったのですが、これを知った友人・知人が「オレはあれが好きなんだが…」とか、「是非この曲をいれて…」などと、リクエストが殺到しました。それからの選曲が大変。おかげで“Always”“Now Is The Hour”“If”などのいい曲が見送りになってしまいました。
 友人のひとりが、「これは、おまえの青春時代へのセンチメンタル・ジャー二ー(感傷旅行)だね」とニヤリ。図星で、どうも面目ない。というわけで、甚だ恐痛ですが、私の感傷旅行におつき合い下さいませんか。
 その前に御礼言上。このテープをお求め下さいまして、まことに有難う存じます。(フランク永井)

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