★洋ちゃんの読観聴 No. 1134
映画 「山河ノスタルジア」
中国の映画なのだが、オフィス・キタノなど制作と
スタッフで日本人も関わっているようだ。これは
経済拡大と所得格差が進行する中国で、
勝者も敗者も自らのアイデンティティを喪失する
という物語だ。
３部構成となっており、最初は1999年、次が2014年、
そして最後は2025年だ。
��1999年、山西省の中くらいの規模の町。昔からの
寺院もある古い町だが炭鉱開発が進んでいるという所だ。
小学校教師のタオは、２人の幼なじみ、炭鉱労働者リャンズーと
実業家ジンシェンから想いを寄せられていた。もともとは
仲の良い３人だったのだが、男２人はタオを争って仲たがいする。
最終的にタオが選んだのはジンシェンで、リャンズーは
町を去る。
�▲献鵐轡Д鵑鳩觝Г靴織織�は子供を出産。資本家と
して成功したジンシェンは息子に金を意味するドルの
“ダオラー”と名づけた。2014年、タオはジンシェンと
離婚しており、実家に戻り父と暮らしていた。ジンシェンと
ダオラーは上海に住んでおり、ダオラーは国際小学校に
通っている。
ある日、長年の炭鉱労働で身体を壊したリャンズーが、
妻子と共に故郷に戻っていることを知る。電器屋だった
タオの実家は今はガソリンスタンド経営をしており日々の
生活には困っていない。タオはリャンズーに治療費を渡す。
タオの父が旅先で急死する。葬儀に出席するため息子の
ダオラーが戻ってきた。久々の親子の再会だが、
ぎこちない。そして彼女は、ダオラーがジンシェンと共に
オーストラリアに移住することを知る。
��2025年。移住先のオーストラリアで19歳に成長した
ダオラーは、中国語が話せなくなっていた。自分は何を
したいのか何になりたいのか悩んでいる。父親ジンシェンは
金持ちとなりメルボルンの豪邸に暮らすが、中国から
移民してきた仲間たちと昔話に明け暮れるだけで、
幸福ではない。そんな親子は気持ちが通じ合わない。
ダオラーは大学で中国人教師に出会い心を通わせあう・・・。
僕は何度か中国に行ったことがあり、仕事を通して
知り合った中国人も何人かいる。そのわずかな経験なの
だが、中国人はアイデンティティに苦しんでいるように
感じる。それは1949年以降の共産党体制のせいなのか、
それ以前からの問題なのかはよく分からない。分からない
のだが一つ思うのは、あれだけの長い歴史があり豊かな
伝統文化がある（はずの）中国で宗教がしぼんでいる
ということだ。この点が欧米におけるキリスト教、中東
などにおけるイスラム教を持つ人々と大きく異なる点
かなと思う。
今は富裕層だけでなく中間層も所得を増やし、日本
などで爆買いも出来る人たちが増えてきた。お金が
ないよりあるほうがいい。だけど、その後に来るものは
何か？ 状況は違うけれど、中国人だけでなく日本人に
とっても重要なテーマだろう。
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