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2016年05月01日10:02

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1132

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1132               

小野寺史宣 「ひりつく夜の音」                 

タイトルを見ると、大沢在昌か北方謙三のハードボイルド
小説かなと想像してしまうが、これは警察・犯罪ものの
小説ではない。

さえない中年男が再生する物語だ。

下田保幸は46歳、独身で、東京郊外に一人で暮らす。 
職業はジャズ・ミュージシャン(クラリネット吹き)なの
だが、バンドはリーダーの死去をきっかけに解散となり、
演奏する機会は減った。音楽教室で教えることで、
なんとか糊口をしのいでいる。

そんな下田に警察から連絡がくる。若い男がケンカ
したらしいが、身元引受人になってくれないかと言う。
音矢という男だが下田は知らない。音矢の姓が
佐久間と聞き、それは昔下田がつきあっていた女性の
名前だった。

警察で音矢に会い、下田はとりあえず彼を引き取る。
音矢の母は確かにかつての下田の恋人だった。
何か困ったときは下田に連絡するよう母親は音矢に
言っていたようだ。だが、その母親は既に亡くなっていた。

音矢は住居を持たず友人らのところを転々としている
ようだ。とりあえず下田は音矢を居候させる。音矢は
ロックのギタリストで、業界ではそこそこ知られているようだ。

下田が音矢の音楽仲間に接し、また昔の仲間らと
再会し、再び音楽に真剣に取り組んでいく。また、
高校時代の友人や行きつけのファミレスで知り合った
フリーライターや弁護士などとの親交も深めていく。

地味な作品なのだが、読み応えは十分ある。音楽を
職業とする中年男と若い男の話だけど、職業が
サラリーマンだったとしても通ずる、人の生き方に
ついてのヒントが押しつけがましくなく描かれている。

余談ながら、ジャズ大好きの僕にとって、たぶん
ジャズを知らない読者よりも倍以上楽しんだと思う。
ジャズは今やマイナーな音楽で、そこそこ名が
知られたミュージシャンでも演奏だけで食べていく
ことが難しい。そのあたりのことが詳しく紹介されて
いる。

そして、作品中に登場するディキシーランド・ジャズの
楽曲がいい。時間に余裕のある人は、ユーチューブで
聴くことを薦める。1曲だけ選ぶとすれば、
"Do you know what it means to Miss New Orleans?"





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